女性同士のドロドロを呼び込む「告げ口魔」
畠山重忠の乱で、義時は結局時政に押し切られる形で無実と覚しき重忠討伐に向かうが、『吾妻鏡』によれば、この乱の背後には時政の後妻の「りく」こと牧の方(宮沢りえ)の存在がある。
時政と牧の方の娘婿・平賀朝雅と重忠の嫡男・重保が祝宴の席で諍いを起こす。その場は収まったものの、牧の方が「朝雅が重保に悪口を言われた。重忠・重保父子に謀叛の疑いがある」と時政に告げ口をし、それを鵜呑みにした時政が畠山父子討伐を命じたのだ。
「頼朝の妾・亀(江口のりこ)の館を焼き払った『亀の前事件』でも、政子(小池栄子)に亀への『後妻打ち』を仕掛けるよう入れ知恵したのはりくでした。今後、政子とりくはますます対抗心を燃やしていくでしょう」(ペリー氏)
りくが「告げ口魔」として物語のカギを握る。
義時の「正室」登場で八重を待つ運命
ドラマでは義時と妻・八重(新垣結衣)の深い愛情が描かれているが、「史料によれば八重が義時の妻となるという記述はありません」と河合氏は指摘する。
史実では阿波局という側室が泰時を産んでいるが、劇中で義時との間に3代執権となる泰時を産むのは八重。今回の八重は三谷氏の創作による“特別枠”の人物なのだ。
しかしこの後義時の正室となる「姫の前」のキャストは、すでに堀田真由に決定している。八重はどうなってしまうのか。
「『吾妻鏡』では、義時が姫の前にラブレターを送り続けても彼女がなびかないため、頼朝が仲介してやっと正室にすることができたとされています。でも、今回の大河でそんな女性が登場したら大変なことになる。義時が嫌われ者にならないよう、おそらく八重は姫の前が出てくるくらいのタイミングで、病気や事故などで他界するのではないでしょうか」(河合氏)
三谷氏の熱烈オファーで実現したという新垣・八重。その最期は、三谷氏の思い入れたっぷりのシーンになりそうだ。
※週刊ポスト2022年5月27日号