迫力の熊徹と猪王山、子役の名演技に癒やされる
初日に熊徹を演じたのは、伊藤潤一郎。「熊徹は自分に似ているところがある」と語るように、これまでも『ライオンキング』の王・ムファサ役、『ユタと不思議な仲間たち』ゴンゾ役など、力強い父親役や、仲間たちを引っ張る兄貴分役が印象深い。
熊徹と、彼と宗師の座を争う猪王山(芝清道)のふたりは、特殊メイクだけでなく全身に毛皮をまとう。ふたりの格闘シーンでは、特殊なパペットを3人がかりで動かす「ビーストモード」に変化。大迫力の殺陣とアクションを披露する一方で、ともに力強い歌声が胸に響く。
子役の九太や一郎彦、二郎丸も、大人顔負けに個性が光る。九太の「おれはひとりで生きてく。強くなって、お前らを見返してやる」と大人たちをにらみつける眼差しの強さや、一郎彦の陰のあるせりふ回し、二郎丸の愛らしさに、感心するやらキュンキュンするやら。
17才の青年に成長した九太は大鹿礼生が演じた。さわやかな歌声とキレのある身のこなしはまさに、渋天街の人気者に育った九太そのもの。人間界で父との再会に戸惑う不器用な姿や熊徹との“親子げんか”はなんとも切ない。そして九太と同じく自分が何者かという問いにとらわれる青年の一郎彦を演じたのは笠松哲朗。狂気を感じさせる終盤は、まさに怪演。身震いするほど怖い!
一方、九太と渋天街のバケモノたちの交流は、歌とダンスで明るくにぎやかに描かれ、まるで異世界に迷い込んだかのような感覚に。九太は、バケモノたちから多くの愛情をそそがれて育てられた“バケモノの子”なのだと思い知らされる。
ラストシーンを前に涙ぐむ人、終演後には熱く語り合う親子の姿も。そして、「あー、見てよかった!」と満足げな少年少女たちも。老若男女を問わず心に刺さる物語を、ぜひ体感してほしい。
撮影/五十嵐美弥
※女性セブン2022年6月2日号