プーチンイズムにどっぷり
コヴァリョフ氏が後任の大統領に就いた場合、ロシアはどうなっていくのか。戦争は終結に向かうのか。それは、プーチン氏が健在かどうかによるという。
「プーチン氏が健在なままコヴァリョフ氏が後継者になる場合、プーチン氏の院政になるので、ロシアは現状維持のままですし戦争は終わらないでしょう。しかし、プーチン氏が亡くなった場合は、コヴァリョフ氏はある程度の自由を手に入れるので、戦争終結に向かう可能性が出てきます」(北野氏)
一方、コヴァリョフ氏が後継者になれば、むしろ今よりさらに過激化するという見方もある。ロシア情勢に詳しい筑波大学名誉教授の中村逸郎氏はこう分析する。
「プーチン政権は22年目になります。36歳のコヴァリョフ氏は、落ち目だったロシアが、プーチン政権になって強いロシアに変貌し、その変化を多感な時期にまざまざと見てきた世代なんです。2014年のクリミア侵攻は、20代後半の血気盛んな頃で、彼らにとって成功体験にもなっている」
プーチン氏は側近たちとアイスホッケーのチームを組んでおり、コヴァリョフ氏もそのメンバー。そこにも大きな意味があるという。
「メドベージェフ首相の後任に抜擢されたミハイル・ミシュスチン氏もチームメイトで、後継候補はここから出てくることが多い。そのグループに属するメンバーたちはプーチンイズムにどっぷり浸かり、プーチン政策の忠実な推進者であることは間違いない。
プーチン氏亡き後は、もっと強硬に事を推し進めれば、さらに強いロシアが実現すると思うようになるかもしれません。彼が大統領になれば、今以上に過激になる可能性もあり得ると思います」(同前)
プーチン時代のほうが良かったと嘆く時代がやってこないことを祈るばかりだ。
※週刊ポスト2022年6月3日号