日本で増え続けている「中国産の薬」リスト【2】
同名の薬が複数回にわたり登録されていることもあるが、これは複数の業者が製造しているケースと、「同じ中国の製造業者が、原薬の製造方法を変更して新たに登録したケース」(PMDA広報課)があるという。
中国の原薬メーカーの参入が、重大なトラブルにつながったこともある。2018年には、中国で製造された原薬に発がん性物質が混入していたことが発覚、世界中で製薬会社が自主回収する騒ぎとなった。中国での工程が問題となったのは降圧剤(ARB)のバルサルタン。表に同薬の名前があることからわかるように、今も幅広く処方される薬だ。
当時、日本ではあすか製薬がこの降圧剤を販売していたが、その中国での原薬の製造過程で、発がん性物質の混入が発覚した。あすか製薬は2017年まで同薬を製造し、国内の病院や薬局で1300万錠が販売済みだった。
「米国のFDA(アメリカ食品医薬品局)などは中国の現地に入って製造過程まで立ち入り調査しますが、日本の規制当局はそれが難しく、輸入した製品をチェックするだけのことが多い。
しかし、実際に製造現場を確認しないと、製造過程での不純物混入リスクや設備の問題などはチェックできません。中国で製造された原薬の品質への信頼性の懸念点を解消するには、国際的な取り組みが必要です」(谷本医師)
そうした懸念があるなか、原薬や原料の中国依存は世界的にますます進んでいくと見られている。欧州の原薬市場でも中国企業がシェアを拡大し、現在は欧州医薬品品質管理局の新規申請数のうち、20%以上を中国企業によるものが占めるという。
中国依存の状況には見過ごせないリスクがある。ひとつは、中国国内の変化だ。これまで拡大の一途だった中国の原薬メーカーや製薬会社は、環境規制の強化などにより、淘汰され始めている。2020年末には、解熱鎮痛薬のパラセタモールの原料を生産していた工場が環境問題で閉鎖に追い込まれたことで、同薬の世界的な価格急騰が起きた。