4月には初のフェス出演(写真/AP=AFLO)

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車いすで移動していた

 デビューから藤さんの死をはじめ私生活の数々の困難を乗り越え、二人三脚で宇多田ヒカルという唯一無二のアーティストを作り上げた父と娘。関係者によると、照實さんの不在の予兆は、およそ4年前からあったという。

 2018年11月、宇多田にとって12年ぶりとなる全国ツアーが行われた。彼女がライブを行うこと自体、活動休止直前の2010年12月に開催されたコンサート以来であり、実に8年ぶりだった。

 6都市12公演で総計14万人を動員したこのツアーで宇多田は、『traveling』『花束を君に』『First Love』といった往年の名曲を次々に歌い上げた。それは宇多田の覚悟の表れだった、と指摘するのは音楽関係者だ。

「実はこのツアーは宇多田さんにとって大きな挑戦のツアーでした。というのも、それまでは照實さんが細部にわたってプロデュースし、全面的に宇多田さんにアドバイスを送っていたのですが、そのコンサートでは照實さんのプロデューサーとしてのかかわりが少なくなっていたと聞いています。それは照實さんの意向でもあり、この先のツアーやコンサートのプロデュースを宇多田さんを中心としたチームでできるようにと、準備をしてきたそうです」(音楽関係者)

 照實さんはツアーには同行していた。だがその姿に驚いたスタッフは少なくなかったという。

「照實さんはもともと持病をいくつか抱えていたようで、以前から脚の調子が悪かったようですが、そのツアーでは、時には車いすで移動することもあったようです。歩けないというわけではないようでしたが、恰幅がよかった若い頃と比べて、かなりやせられた印象で……。それまでコンサートのときには細かく指示を出していたのと比べて、“後ろで見守る”ことが多かったようです」(前出・音楽関係者)

 ツアーの千秋楽を迎えた12月9日。この日は宇多田のデビュー20周年記念日だった。千葉・幕張メッセで行われたコンサートで、アンコールの『Automatic』を歌い終えた宇多田は、「言おうかどうか迷ってたんだけど」と切り出してこう述べた。

「私がありがとうって言いたい人たちが2人いるんだけど。私を産んで育ててくれた母親と父親にありがとうと言いたくて(中略)家族と仕事すると、いいことも悪いこともいろいろある。父親とはよく会うんだけど、なかなか照れくさくて言えないから。ちょっと贅沢だけど、この場を借りて、20年間ありがとうと言わせてください」

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