稲垣、京都は「自分のふるさと」
そんな“素”に近い稲垣が観られるとあって、鈴木氏脚本・演出の8作品は、特にファンの間で人気が高いのである。
先日、稲垣にも話を聞くことができた。鈴木氏が関わるカンパニーは「すごく長いですし、親戚というか家族みたいな感じかな。血の繋がりのような深さを感じるし、何でも言えるしリラックスもできる」と。
京都についても「二十歳の頃、グループで『ANOTHER』という舞台で1か月くらい滞在したとき、すごく居心地が良くて、勝手に自分のふるさとのように感じていました。それからもプライベートで訪れて、お寺巡りをしたり、美味しいものを食べたりしてきたので、今回もすごく楽しみです」と言う。
稲垣が昨今、「グループ」と表現し、頻繁に話をするのはSMAP時代のエピソード。言うまでもなく、当時からの“積み重ね”が、鈴木氏が言う「おじさん吾郎くん」の“人間味”や“ざっくばらんな感じ”へと昇華している。
『あさイチ』では、ファンが「吾郎漫談」と呼び、作品とはまた異なる喜びを憶えるアフタートークにも話が及んだ。鈴木氏はさすがによく見ていて、「お客さんにちょっと冷たい素振りを見せる」と笑う。キャストを交えた数回のカーテンコールが終了し、ラスト、稲垣一人が再び舞台のセンターに現れ、ファンの顔ぶれを眺め、いわゆる“客いじり”をしながらツンデレなトークを繰り広げるのが「吾郎漫談」。鈴木氏はそれを「綾小路きみまろさんのよう」と言い、「漫談の部分だけでも独立したステージになる」「その内そういう舞台ができるんじゃないですか」とも。
たとえば「吾郎漫談」では、冒頭、「僕だって本当はこんなところに居たくないんですよ」と言い放ち、客の反応を見て、「早く家に帰って胡蝶蘭に水をあげて、ワインを飲みたいんだよッ!」などと言うのである。
コロナ禍ゆえ声を出してのリアクションはできないが、マスク越しのファンが一瞬困惑するのを確認し、「冗談ですけどね」と……。