甲子園には出場できなかったがドラ1で3球団が競合した高橋周(時事通信フォト)
高橋周平は東海大甲府で高校通算71本塁打をマークし、ドラフト1位で3球団が競合。高校ナンバーワンスラッガーは将来を嘱望されたが、試行錯誤を繰り返し、規定打席に初めて到達したのはプロ7年目の2018年だった。このシーズンは11本塁打をマークしたが、その後はミート重視のコンパクトな打法になり、2020年は打率.305、7本塁打を記録している。だが、昨年の打撃不振に続いて今季も打率.238、1本塁打、7打点と「特徴のない選手」になってしまっている。
また、根尾の大阪桐蔭の先輩・平田良介も1年秋から4番を打ち、高校通算70本塁打と豪快なスイングが持ち味だった。ドラフト1位で指名した当時の落合博満監督は「あれだけ振れる選手はそうはいない。鍛えれば俺以上の打者になる」と絶賛していた。だが、プロ入り後は中距離打者としてレギュラーをつかむ。2018年に打率.329をマーク。一方で本塁打は2013年の15本が最多で、2017年以降、2桁本塁打はない。ケガや病気(異型狭心症)で離脱したこともあって出場機会は減っていき、今季は打率.200、0本塁打、3打点だ。
堂上直倫も「超高校級スラッガー」として注目された逸材だった。愛工大名電で甲子園に3度出場し、甲子園での通算打率は.480。高校通算55本塁打を記録した。2006年高校生ドラフト1位で中日、阪神、巨人の3球団が競合。抽選を外した巨人の「外れ1位」が同学年の坂本勇人だった。坂本が右打者最速でプロ通算2000安打に到達したのに対し、堂上が規定打席に到達したシーズンは2016年のみ。2019年の12本塁打が自己最多で、いまは内野ならどこでも守れるユーテリティープレーヤーとして活路を見出している。
長年、中日を取材していたスポーツ紙の遊軍記者は、こう振り返る。
「平田も堂上も入団時は打球が凄かった。精度は高くなかったけど豪快なスイングでスタンドに突き刺さるような打球で。(高橋)周平もプロ初アーチは京セラドームで逆方向の左翼席に叩き込んでいます。持っている資質を考えれば20本塁打は軽く打てるはず。広いナゴヤドームが本拠地なのでホームランバッターを育てるのが難しいという事情はあると思いますが、アマチュア時代に長距離砲で鳴らした選手が、中日に入るとこじんまりしたタイプになってしまう。中距離打者を目指すのが悪いわけではないが、ファームの試合を見ても、スイングが小さく当てにいくような選手が多い。相手バッテリーからすると怖さがないんですよね。強打者が次々に台頭している西武を見ると、若手の時から空振りを恐れずガンガン振っている。もちろん、ただ大振りしているのではなく、首脳陣が理になかったフォームでフルスイングするように指導している。選手の資質の問題で片付けるのではなく、中日は打者の育成方針を見直す必要があると思います」
低迷期が続いている中日は、立浪監督が就任した今年も最下位に沈んでいる。石川昂弥、大卒ルーキーのブライト健太、鵜飼航丞と将来が楽しみなスラッガーがそろっているだけに、育成手腕が問われる。
難病を公表した平田は苦しいシーズンが続く(時事通信フォト)
堂上は2017年以降、打率が2割台前半(時事通信フォト)