「自分は踊りながらも超冷静で自己管理はしっかりしていたから、間違って変な男にお持ち帰りされることは一度もなかったです。私にとって男は福神漬くらいの位置で、いてもいなくてもよかった。それよりも六本木での夜遊びの方が私の青春でした」
そう言ってお立ち台の女王はにこやかにほほ笑んだ。
男性アイドルが警察沙汰を起こした
バブル崩壊とともに勢いを失った六本木が再び注目を集めたのは2003年。国内最大規模の再開発プロジェクト・六本木ヒルズが完成したのだ。
六本木の空に伸びるタワーには気鋭のIT企業がオフィスをもうけ、居住棟にはITベンチャーや投資ファンドのマネジャーなど、若くして富を得た会社経営者がこぞって入居し、「ヒルズ族」という呼び名が誕生した。
2007年には東京ミッドタウンが完成。国立新美術館やヒルズの森美術館、ミッドタウンのサントリー美術館などが立ち並び、六本木はセレブでアートな街へと進化した。
だが、一方でアンダーグラウンドな一面も浮上した。
「サパークラブやキャバクラなどの風俗店が乱立して外国人の客引きが目立つようになり、犯罪グループによる違法薬物の売買なども指摘されるようになりました。2010年には西麻布の会員制バーで酔っぱらった市川海老蔵さん(44才)が六本木人脈の知人に暴行される事件が発生し、六本木界隈に“怖い街”とのイメージが広がりました」(芸能記者)
それでも、芸能人の遊び場として、夜な夜なパーティーが開かれた。
「2014年には人気絶頂だったAKB48の元メンバー・小嶋陽菜さん(34才)の誕生日会がサパークラブで開かれ、高橋みなみさん(31才)や大島優子さん(33才)、篠田麻里子さん(36才)ら新旧メンバーが豪遊したと報じられました。
ほかにも同年、赤西仁さん(38才)と山下智久さん(37才)、錦戸亮さん(37才)が路上で男女5~6人グループと小競り合いになり、山下さんが女性の携帯電話を取り上げ、警察沙汰になったこともありました。立地がよく、お忍びの訪問が多い六本木に、会員制バーを出す芸能人もいます」(前出・芸能記者)
「サウナの聖地」としても著名人に好まれている。
「特に人気なのが『X』というサウナ。浴室でスマホ利用や飲食OKとの独自ルールがあり、清原和博さん(54才)や三浦知良さん(55才)などスポーツ界の愛好者も多い。
芸能人にも人気で、脱水症状になったTOKIOの松岡昌宏さん(45才)を、たまたまサウナにいあわせた吉川晃司さん(56才)が介抱したとの伝説があります。ほかにも松田龍平さん(39才)やDA PUMPのISSAさん(43才)、嵐の相葉雅紀さん(39才)らの目撃談があります」(前出・芸能記者)
姿を変えながらも、多くの人に愛されてきた六本木。約半世紀にわたってこの土地に住み続ける漫画家の黒鉄ヒロシさん(76才)が「変わらぬ魅力」を語る。
「コロナでほかの街は変わったけど、六本木はそれほど変わらなかった印象です。そもそもここは人が住む街というより、周りから人がやって来る街です。銀座や赤坂よりも軽やかで気楽になれる土地だから、その空気感を求めて多くの人が集まる。これからもテーマパークのような“六本木ランド”が多くの人を魅了するでしょうね」
今日も真夜中に、六本木が動き始める──。
(了。前編から読む)
※女性セブン2022年7月28日号