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中国市民の亡命希望者が急増 2012年は年間1万2000人、2021年は14万人

亡命希望者が急増する背景は?

亡命希望者が急増する背景は?

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は6月中旬、2012年から昨年までの10年間で、約73万人の中国市民が亡命を求めており、17万人以上が難民として中国国外に居住しているとの統計を発表した。2012年の亡命者数は約1万2000人だったが、その後、急増しており、2021年には14万人まで達していることが明らかになった。

 中国の習近平国家主席は2012年秋に中国共産党総書記に就任しており、その後の亡命者の急増は習近平指導部による新疆ウイグル自治区やチベット自治区などの少数民族統治や反腐敗運動などによる人権無視の過酷な政治的弾圧を裏付けていると、UNHCRはコメントしている。

 報告によると、2002年から2012年までの胡錦濤指導部時代の亡命者数は2002年に2万人を超えていたが、その後は2万人以下で推移。2010年は5000人を下回った。

 しかし、2012年以降の習近平指導部時代に入ると、2013年に約4万人、2014年は6万人、2015年が7万人、2016年が8万人、2017年には10万人の大台を越え、2019年から2021年の3年間はそれぞれ12万人を超えるなど急激に増加している。

 亡命先の国としては、2021年の1年間では米国が8万8722人と最も多く、次いでオーストラリアの1万5861人、イギリスが2428人、カナダの1318人と続いている。地域としては、英国とロシアを除く欧州諸国全体が2323人、南米諸国が5904人、アジア諸国は1755人となっている。ちなみに中国と隣接するロシアはわずかに16人。アフリカ諸国も149人だった。

 国際的人権団体の「セーフガード・ディフェンダーズ」は「昨年は14万人とこれまで最高の数字を記録したが、これらの数字は習近平指導部による少数民族弾圧による影響に加えて、強制力が強い『ゼロコロナ政策』の影響も反映されているのは間違いない」とコメントしている。

 これに加えて、注目されるのは、これらの亡命者数には香港市民は含まれていないことだ。香港では言論の自由などを取り締まる香港国家安全維持法が2020年6月30日に施行されて以来、海外への移住者が急増した。

 英国政府が2021年1月から香港に住む「英海外市民(BNO)旅券」保持者らを対象に、英移住を後押しする特別ビザ制度を開始して以来、1年2カ月間で12万人超がビザを申請しており、香港からの移住者を含めると、中国からの実質的な亡命者数はさらに増えることになる。

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