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怪優・佐藤二朗 堤幸彦監督が見出した“見たことない存在感”「個性なのか演技なのか…」

『鎌倉殿の13人』で狡猾に立ち回る比企能員(写真提供/NHK)

『鎌倉殿の13人』で狡猾に立ち回る比企能員を演じる佐藤二朗(写真提供/NHK)

 一癖も二癖もある役を演じてきた怪優が今、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で中心人物を担っている。佐藤二朗(53)はいかにして監督やプロデューサーからのオファーを勝ち取ってきたのだろうか──。【全4回の第2回。第1回から読む

強烈な破壊力

 遅咲きの佐藤がテレビ進出するきっかけとなったのは、ドラマ『ブラック・ジャック2』(2000年・TBS系)への出演だった。『自転車キンクリーツカンパニー』の公演で舞台に立つ佐藤をたまたま見た堤幸彦監督がオファーした。ワンシーンのみの出演だったが、佐藤にとっては大きな転機となった。演じたのは、首の後ろなどを落ち着きなく掻きながら患者にがんを宣告する「医師A」だった。堤監督が語る。

「舞台の彼の芝居には、まるで見たことがない存在感があった。普通の芝居の枠にとらわれない、個性なのか演技なのかはっきりしない芝居が強烈な破壊力を持っていた。それをそのままテレビの枠のなかでやってもらいたいと思ったんです。

“全身がかゆい医者”という設定にしたのは、医者らしい芝居をしてほしくなかったから。がん宣告をする状況で深刻な表情、あるいはポーカーフェイスで伝えるような医者役にありがちな芝居をしてもしょうがない。そこで佐藤二朗の落ち着きのない個性に痒みという理由を与え、それを彼なりに解釈して絶妙な間の取り方やセリフの崩し方をやってほしかった。

 狙い通り、ほんの短いシーンでしたが観た人の反応は大きかった。通常ならサッと流れていくシーンに強烈な個性を持たせることができたと思います」

 役者としての佐藤の魅力を堤監督はこう評する。

「名優の条件の一つだと思いますが、誰とも重ならないところ。佐藤二朗の真似は誰にもできないし、佐藤二朗は誰の真似をしようとも思わない。彼の個性を見せつけられたら、監督なりプロデューサーは“使いたい”となります。それほど業界にインパクトを与え続けてきたと思います」

 同様に佐藤の舞台に魅了され、繰り返しタッグを組んできたのが福田雄一監督である。出会いは2007年、福田監督が演出家のマギー氏と共同で制作した舞台『U-1グランプリ』の公演だった。

「当時、僕はまだ『佐藤二朗』を知らなかったのですが、コントが抜群に面白かった。ひとりでボケツッコミをやって、その塩梅が絶妙なんです。一目惚れして、仕事をお願いするようになりました」(福田監督)

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