スポーツ

PL学園野球部「最後のコーチ」が村野工業で再出発 廃部の内実「申し訳ない気持ちでいっぱいだった」

PL学園の「最後のコーチ」を務めた千葉氏(右)が胸に秘めていた思いとは(左は川上監督)

PL学園の「最後のコーチ」を務めた千葉氏(右)が胸に秘めていた思いとは(左は川上監督)

 春夏合わせて通算7回という甲子園制覇の実績がありながら、2016年に事実上の廃部となったのがPL学園野球部だ。数々の名勝負のなかでも、1998年夏の準々決勝で延長17回の死闘の末に横浜高校に惜しくも敗れた試合は、鮮烈な印象を残した。その横浜高校の前監督と、PL学園の“最後のコーチ”が今、高校野球指導の現場でタッグを組んでいる。今だから明かせる、PL学園野球部への思い、そして今後について、新刊『甲子園と令和の怪物』が話題となっているノンフィクションライター・柳川悠二氏が聞いた。

 * * *
 神奈川の名門・横浜高校の前監督である平田徹氏(39)が新監督に就任した神戸村野工業(兵庫)において、部長として平田氏とチームを支えているのが千葉智哉氏(33)である。

 昭和から平成の時代にかけて、横浜と人気を二分したPL学園のOBである千葉氏は、2016年に事実上の廃部となったPL学園硬式野球部の“最後のコーチ”だった。来春に迫る「彩星工科」への校名変更および学校改革に向け、1998年に甲子園で延長17回の死闘を繰り広げた屈指の伝統校OBがタッグを組み、かつて春2回、夏1回の甲子園出場経験のある古豪の再建をスタートさせた。

 私は2014年夏の大阪大会決勝で、大阪桐蔭に敗れたPL学園を取材したことをきっかけに、廃部へと舵を切った学園の母体であるパーフェクトリバティー教団(PL教団)を長く取材し続けた。

 春3回、夏4回の全国制覇を誇り、全盛期の1980年代にはPLの教団名を宣伝し、教勢拡大にも貢献した学園野球部はなぜ消滅しなければならなかったのか。

 発端は、2000年代に入ってから度々発覚した暴力事件をはじめとする不祥事だったのは確かだ。付き人制度など、厳しい上下関係や多くのしきたりがあった野球部の健全化をはかることは、教育機関として当然のことだろう。

 だがその一方で、信者の減少に歯止めが利かず、信者の2世や3世が通う学園の生徒数も大きく減っており、かつてのように信者の浄財を野球部に投下できないどころか、学園自体が存続の危機に瀕していたことも背景にあった。PL学園が廃部にいたった経緯はぜひ拙著『永遠のPL学園』(小学館文庫)を参照いただきたい。

 2013年に発覚した不祥事を受け、半年間の対外試合謹慎処分が解けたあと、教団は野球経験のない正井一真校長を監督に据え続け、2014年秋には、勝てば久方ぶりのセンバツ出場に近づく近畿大会の試合当日の朝に、新入部員の募集停止が報道された。2012年から2016年という混乱の野球部の中枢に、コーチとして居続けたのが千葉氏だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

群馬県前橋市の小川晶前市長(共同通信社)
「再選させるぞ!させるぞ!させるぞ!させるぞ!」前橋市“ラブホ通い詰め”小川前市長が支援者集会に参加して涙の演説、参加者は「市長はバッチバチにやる気満々でしたよ」
NEWSポストセブン
ネットテレビ局「ABEMA」のアナウンサー・瀧山あかね(Instagramより)
〈よく見るとなにか見える…〉〈最高の丸み〉ABEMAアナ・瀧山あかねの”ぴったりニット”に絶賛の声 本人が明かす美ボディ秘訣は「2025年トレンド料理」
NEWSポストセブン
千葉大学看護学部創立50周年の式典に出席された愛子さま(2025年12月14日、撮影/JMPA)
《雅子さまの定番カラーをチョイス》愛子さま、“主役”に寄り添うネイビーとホワイトのバイカラーコーデで式典に出席 ブレードの装飾で立体感も
NEWSポストセブン
審査員として厳しく丁寧な講評をしていた粗品(THE W公式Xより)
《「脳みそが足りてへん」と酷評も》粗品、女性芸人たちへの辛口審査に賛否 臨床心理士が注目した番組冒頭での発言「女やから…」
NEWSポストセブン
12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
宮崎あおい
《主演・大泉洋を食った?》『ちょっとだけエスパー』で13年ぶり民放連ドラ出演の宮崎あおい、芸歴36年目のキャリアと40歳国民的女優の“今” 
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
会社の事務所内で女性を刺したとして中国籍のリュウ・カ容疑者が逮捕された(右・千葉県警察HPより)
《いすみ市・同僚女性を社内で刺殺》中国籍のリュウ・カ容疑者が起こしていた“近隣刃物トラブル”「ナイフを手に私を見下ろして…」「窓のアルミシート、不気味だよね」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情