国内

東京地検特捜部「吉永軍団」の軌跡【後編】田中角栄逮捕で確立した特捜部ブランド

「田中角栄逮捕」をどう実現したか(写真/共同通信社)

田中角栄逮捕で特捜部ブランドができた(写真/共同通信社)

 戦後最大の疑獄と呼ばれるロッキード事件。前首相・田中角栄を逮捕した東京地検特捜部は、陣頭指揮を執ったカリスマ検事・吉永祐介(2013年没、享年81)と、そのもとに集った精鋭たちによるチーム力で捜査の難題を次々に突破した。史上最強の検察軍団の軌跡を辿る。【前後編の後編。前編から読む

 * * *
 1968年に日通事件の捜査にも関わった松田昇検事を「ミスター検察」と元毎日新聞記者の高尾義彦氏は評する。田中角栄に次ぐ大物の首を取った。

「苦学しながら中央大学法学部を卒業し、検事になった。非常にまじめな人柄を吉永さんが買って重要な役割を任せました。松田検事は事件の最重要人物である児玉誉士夫氏の尋問を担当しています」(高尾氏)

 児玉は政界のフィクサーと言われ、検察が長年追いかけてきた人物。児玉の首取りは“大将首”への大きな足がかりとなった。

 捜査の中で最大の難問となったのは、アメリカの司法省が捜査協力するか否かだった。協力がなければ捜査は進展しない。

 そこで極秘に渡米したのが、東京地検特捜部で吉永を間近で見ていた弁護士の堀田力氏だ。

 長い交渉の末、米司法省と協力関係を築いた若き日の堀田氏は、アメリカの公聴会で賄賂を証言したロッキード社のコーチャン元社長らを尋問するために奔走した。

「捜査権のない日本の検察の代わりに米司法省がコーチャン氏らを尋問する『嘱託尋問』の約束を取り付けたものの、ロッキード側の有能な弁護士が激しく抵抗し、尋問は違法との申し立てを連発しました。最終的には日本の最高裁判所が証人の刑事免責を保証することで、コーチャン氏らの尋問にこぎ着けました」(堀田氏)

 ロッキード社から丸紅を通じて、田中に5億円が渡ったことを認めたコーチャン氏らの調書は、田中逮捕への大きな推進力となった。

 この時、留学経験を買われて渡米し、米司法省が収集した資料を朝から晩まで読みふけっていた特捜部の検事が、のちにテレビのコメンテーターとしても活躍する河上和雄氏。プライベートでも歌手の千葉紘子(77)と結婚して世間を賑わしたあの河上氏も吉永軍団精鋭の一角だったのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」