まだ「外国人タレント」が珍しかった時代。チャックさんの個性が注目され、ドラマやCMにも引っ張りだこの売れっ子タレントとなった。
「当時の芸能界はバブル全盛期で、30分の番組にスポンサーが何千万円も出していました。ある程度、名前が知られるといろんな仕事が舞い込み、番組で海外に行くこともしょっちゅう。日本の警察署の1日警察署長もやりました。『内容はどうでもいいけど、チャック・ウィルソンの書いた本なら売れる』と出版を持ちかけられたこともあった。遊び半分でテレビに出たのに、そこまで人気になって不思議な気分でしたね」
特に印象的だったのが、TBSの特番『オールスター感謝祭』だ。チャックさんと、プロレスラーの藤原喜明さん(藤原組長)とのガチンコ相撲対決は番組名物となったが、ふたりのライバル関係には、ある“仕込み”が隠されていたと告白する。
「初対面の藤原さんに『チャックさん、みんな僕らをライバルだと思っているから、これを(演出に)利用しましょう』と言われたんです。僕も面白がって、藤原さんと楽屋の壁をドンドン叩くなど物々しい雰囲気にしたら、警備の人が飛んできた(笑)。この一件から『チャックと藤原組長が楽屋で大喧嘩した』との話が広まり、『2人の絡みは面白い。番組でどんどん対決させよう』となって僕と藤原組長のライバル関係が定着したんです」
オープンで社交的な印象のあるチャックさんだが、番組などで知り合った人々とプライベートで交流することはなかった。
「『HOWマッチ』で一緒だった弁護士のケント・ギルバートは頭が良く、性格も優しいけど、僕とはあまり気が合わなかった(苦笑)。彼は、目の前に壁があったら壁を調べて回り道したり、引き返したりする。壁を壊して進む自分とは正反対でしたね」