萩本欽一も(時事通信フォト)

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なぜ「切り札」は効かなくなったのか

 大規模接種が開始された2021年5月、菅義偉前首相は全国の自治体に「ワクチンは切り札だ」とハッパをかけた。そのかいあってか今年8月28日時点で2回目接種を終えたのは人口の81.3%。3回目完了も64.1%に達する。65才以上の高齢者に至っては9割が3回目を打ち終え、4回目の接種が進む。猛スピードで推進された “切り札”はなぜ効かなくなったのか。

「最大の要因はウイルスの変異です。特に第7波は、これまで感染の主流だったオミクロン株の派生型『BA.2』よりも感染力が1.27倍強いとされる『BA.5』の登場で一気に感染が広がりました。

 過去の感染やワクチン接種によって獲得した中和抗体の攻撃を、ウイルスが実質的にかわすことを『免疫逃避』といいますが、BA.5は免疫逃避が発達しているため、感染力が強いうえにワクチンが効きづらい。感染力の増強と、ウイルスがワクチンを避ける能力の向上の“相乗効果”によって、1回目や2回目接種の頃と比較して非常に感染しやすい状況が生じている」(久住さん)

 血液内科医の中村幸嗣さんもウイルスの変異でワクチンの防御力が大きく下がったと指摘する。

「デルタ株までのワクチンの感染予防効果は9割とされました。接種さえすれば行動制限しなくても感染を防げた。しかしオミクロン株以降はワクチンの感染予防効果が大幅に低下し、3回、4回と打っても大量の感染者が出ました。

 国立感染症研究所は3か所の病院のデータをもとにBA.5に対し、3回目接種から2週間以上3か月未満でも65%の発症予防効果があるとしています。たしかに研究所が調査した3つの病院ではいい結果が出ていますが、現場の肌感覚としては、発症予防効果はもっと低いです」

 独自に現在の予防効果を試算した小島さんは、20〜30%ほどだと指摘する。

「感染研の調査は発熱外来を訪れた1500人ほどの少数のデータを解析したものです。私が厚労省アドバイザリーボードに提出された感染者の実数のデータをもとに計算してみたところ、BA.5に対する感染予防効果は20〜30%に低下しているという結果になりました。

 先行研究のあるイスラエル、アメリカ、カタールのデータを見ても3回目接種の感染予防効果は16〜26%ほど。65%はかなり高く見積もっている」(小島さん)

 4回目以降は、さらに感染予防効果が低下すると小島さんは続ける。

「イスラエルの論文によれば岸田首相が接種した『モデルナ』ワクチンの4回目接種後の感染予防効果はたったの11%。オミクロン株に対する抗体価は、感染が広まった初期の株のおよそ10分の1程度です。しかも4回目接種から2週間以内では、接種者と未接種者に感染率の違いがなかった。岸田首相が接種後9日目に感染したのは意外なことではありません」(小島さん)

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