ダフ屋行為で逮捕された自称旅行ガイが高値で転売しようとしていたW杯サッカーの入場チケット。2002年(時事通信フォト)

ダフ屋行為で逮捕された自称旅行ガイが高値で転売しようとしていたW杯サッカーの入場チケット。2002年(時事通信フォト)

 プロスポーツの世界でも昔から、試合会場付近には「ダフ屋」と呼ばれる、チケットの転売屋がウロウロしていた。そして、その真横では会場スタッフが「ダフ屋からチケットを購入するな」とメガホンと看板を使って注意喚起を行うが、その目の前で、ダフ屋からチケットを購入する人が少なからず存在した。ダフ屋行為が各自治体の迷惑防止条例で禁止されている違法行為であることは広く知られていたし、摘発や逮捕はたびたびニュースになっていた。そして、彼らがいわゆる”普通の仕事”をしている人たちではないことは、十代の若者でも察していたことだ。にも関わらず、ダフ屋からチケット購入する人はいつの時代も、一定数存在し続けてきた。

 ダフ屋から購入する人たちは異口同音に「どうしても見たかった、いくら金を払うかは自由」と自身を正当化していたものだ。転売相手とのやりとり場所がSNSなどネットに移ったが、利用者の口からは自らを正当化したり、責任を他者に転嫁させる向きが強い。チケット不正転売禁止法で禁じられているにもかかわらず、自分は本職の業者ではない個人だから、きっと大丈夫であろうと勝手に判断しているのだ。だが、定期的に、そして多数の高額転売チケットをやりとりしていたら、それは業者と同じだと当局が判断する可能性は残るだろう。

 また、一部のリセール仲介サービスにおいても、その公演の主催側が公に禁じているはずの転売チケットや、公式リセールの券面価格に混じって高額なものがあったりする。これら仲介サービスは、警察から監視を要請されているという情報もあるが、フリマサイトと同じで監視の目が追いつかない、というのが現状なのだろうか。

 不正な高額転売を利用して悪びれない人たちの言い分は、海賊版サイトを擁護する利用者たちの勝手な理屈にも似ているかもしれない。ニーズがあるのだからと皆が開き直れば、クリエイティブ産業は潤わず、衰退することは明白だ。転売チケット問題も、ファンの好意が全く関係のない第三者によって搾取される、そしてアーティストらは本来受けられるはずだったファンからの支援を、やはり関係のない第三者に横取りされる構図である。

 こうしたゆがんだ欲求を消費者自身が持たないように努力しない限り、転売屋をいくら摘発しようと、すぐに新たな転売屋が現れる。もし取り締まるのであれば、相当に厳しく徹底的に取り組まない限り、対策にはならないだろう。必要なのは売る方の取り締まりよりも、消費者が陥りやすい心理状態を市民がよく学ぶ、高額転売チケットを購入することは不利にしかならない仕組みを構築するなど、消費者への対策強化、意識改革なのかもしれない。

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