歯周病を放置しておくと…(イメージ)
日本の成人の約7割が、歯周病を患っているとされる。放置すると心臓病や認知症など重大な疾患につながることが、近年わかってきた。
まず指摘されるのが、循環器との関連だ。歯周病の人はそうでない人に比べて1.5~2.8倍、虚血性心疾患や脳梗塞になりやすいとされる。日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座教授で歯科医師の沼部幸博氏が語る。
「原因のひとつとして歯茎の毛細血管に入り込んだ歯周病菌が心臓近くの血管の壁に取りつき、血管内にコブ(アテローム性プラーク)ができると、血管が狭まり血流が悪くなります。そうすると心臓の筋肉に酸素や栄養が行き渡らなくなり、狭心症や心筋梗塞のリスクが高まります。これが脳の血管で生じれば、脳梗塞など脳卒中の原因になります」
歯周病と糖尿病には、特に強いつながりがある。
「歯周病菌が歯茎に侵入すると、炎症物質が歯周病の部位で作られます。この炎症物質が血管を通じて全身を巡り、血糖のコントロールを行なうインスリンの働きを妨げ、糖尿病を発症しやすくし、また悪化させると考えられています」(同前)
近年注目されるのは、認知症との関連だ。
「噛むことが脳への刺激となり認知機能を活性化させますが、歯周病だとその機能が低下します。
また、アルツハイマー型認知症は異常なたんぱく質であるアミロイドβが脳に蓄積して発症するとされますが、血管を通じて体内に侵入した歯周病菌がアミロイドβの産生や蓄積を促進するということがわかっています」(沼部氏)
さらに昨年2月、歯周病学の国際誌で、歯周炎を有する新型コロナ患者は歯周病でない患者より死亡するリスクが約9倍高まることが発表され、歯周病と新型コロナとの関連性に注目が集まった。
「新型コロナウイルスは舌の表面などに存在する受容体(ACE2)に付着することで感染するのですが、その前段階として、歯周病菌の酵素で口腔内の細胞が傷つくことでウイルスが侵入しやすい環境になります。以前よりインフルエンザと歯周病との関連も知られており、口の中の汚れはウイルス感染のリスクを高めます」(同前)
他にも骨粗鬆症や関節リウマチ、がんや誤嚥性肺炎なども歯周病菌と関連するとの報告がある。
※週刊ポスト2022年9月30日号
