中継さえ上手くいけばいい
一方で、球団から「書くな」などと表立って箝口令が敷かれるケースはまずないという。
「今時、かえってネタになるような露骨な脅しをやる球団なんてありませんよ。ただ、記者に別の独自ネタを提供して書かせないことはままある。また球団関係者が懇意にしているキャップなどに『理解してくださいね』とやんわり伝えてくる。メディア側は球団に“貸し”が作れるので要望を呑むことが多い」(前出・在京のスポーツ紙デスク)
こうした構図のなかでメディア側に“忖度”が生まれていくという。匿名を条件に、巨人戦の野球解説も務める野球評論家が実情を語ってくれた。
「特に選手を個別に呼ぶことが多いテレビやラジオは深刻です。どの局にも中継の多い巨人に食い込むディレクターがいて、球団と持ちつ持たれつの関係です。中継さえスムーズにいけばいいんだからスキャンダルなんて報じる必要がない」
最近は各社が「ネットニュース」を配信していることも、“自主規制”に拍車をかけている。
「勇人? なんていうかな、もう少し気が出てこないといけませんな」
9月19日の試合後、巨人の原辰徳監督は途中交代させた坂本についてそうコメントしたが、それを報じたネット記事は大炎上となった。
「原監督は坂本のプレーについて話したのですが、発言がネットニュースに載ると女性問題と結びつける読者がコメント欄に殺到して炎上。坂本の件に安易に触れるとすぐに拡散され、球団側から『○○新聞の○○が書いた』とにらまれるのではないかと不安になってしまい、“書かない”という方向のスパイラルに陥っているところがある」(スポーツ紙関係者)
※週刊ポスト2022年10月7・14号