ただ、これで今オフの大谷のトレードの可能性が消えたわけではない。現地メディアの情報では、大谷の来シーズンの年俸が3000万ドルに決まったことで、「トレード要員として魅力的になった」という見方も紹介されている。2020年に年俸調停の権利を持つレッドソックスのムーキー・ベッツが当時最高額となる年俸2700万ドルでの1年契約に合意しながら、1か月後にドジャースへ電撃トレードされたこともあった。福島氏が言う。
「大谷の来シーズンの年俸がはっきりすることで相手球団がトレード交渉に乗り出しやすくなるのは事実だが、常識的に考えればその可能性は低い。球団側は来年も大谷がエンゼルスでプレーできることを示す目的でこの時期に契約をしたと考えられます。新オーナーとの交渉をスムーズに運ぶためには、大谷のトレードを決めることも、大谷と長期契約を結んでしまうことも避けたいわけです。所属選手にスターがいるのはプラスだが、トラウト、レンドンに加えて大谷とまで長期契約を結んでしまうと、新オーナー側から見れば負担にも感じられる。つまり、長期契約を結ぶのか、トレード要員にするのか、大谷の今後は新オーナーの判断になるということです」
新オーナーが決まるのは来年5月頃だとみられている。来年オフにFA権を取得する大谷との先行きが決まるのは、それからということになるというのが福島氏の見方だ。
「もちろん大谷が自分の意思で来シーズン中にエンゼルスと長期契約を結んで残留する可能性もある。大谷はポストシーズンに駒を進められる球団でのプレーを望んでいる。エンゼルスが新オーナーのもとでプレーオフ進出のチャンスが出てくるようであれば残留に傾くだろうし、来年も期待外れの結果ならオフにFA権を取得して行きたいチームと交渉することになるだろう」
記録ずくめのレギュラーシーズンを終えた大谷だが、異例の契約によって来年のWBCでその勇姿が見られる可能性が高まるのであれば、ファンにとっては当然、喜ばしいことだ。来年の大谷も、フィールド上はもちろん、移籍市場においても注目を集める“主役”であり続けることはたしかだろう。