「痛み」「しびれ」に注意
体を動かすことすら難しい、ぎっくり腰のつらい痛みも、やはり体操で緩和できる場合もある。違いは、横になった体勢で行なう点だ。
「まず『うつ伏せ』に寝て3分間深呼吸し、リラックスします。枕を胸の下に入れ、脚を肩幅に開いてさらに3分間深呼吸。下半身の筋肉もリラックスさせます。
続いて床に手をつき肘を立て、息を吐きながらゆっくり上体を反らします。5~10秒間、その姿勢を保持したら、また戻ります。この動作を10回繰り返します。慣れてきたら、枕を外して肘を伸ばし、腕を立てて最大限、上体を反らせて5~10秒キープする。これも10回繰り返します。
『これだけ体操』と同様に、血流を改善して背筋の疲労を回復させることに加え、不安や恐怖心を軽減させる効果が期待できます」
必ず注意しなければならないのが、運動中に「お尻から太ももに痛みやしびれが生じたらすぐに中止」することだ。
「体操中に片方のお尻から太ももにかけて痛みやしびれが生じたら、『脊柱管狭窄症』が疑われます。運動を中止して、医師に相談してください。脊柱管狭窄症は重度になれば手術の検討が必要ですが、軽度であれば自分でケアでき、痛みを緩和させることができます」
脊柱管狭窄症が原因の痛みは「腰痛ではなく主に坐骨神経痛」(松平医師)だというが、これを緩和するのが次の「ひざ抱えポーズ」だ。
「高めの枕に頭を載せて仰向けになり、椅子など高さがある物に両脚のひざを曲げて載せ、30分間リラックスします。その際、足首は浮かせるようにして、時々動かすとよいでしょう。その後、体をリラックスさせたまま、両ひざを両手で抱えて、深呼吸しながら20~30秒間キープします。これは狭窄による神経の圧迫を取り除くポーズで、背中を曲げて足を上げたり、ひざを抱えることで脊柱管が拡張されて神経根への圧迫を減らし、神経の血流が改善されて痛みやしびれが緩和されます」
このように、多くの腰痛は「医者いらず」でセルフケアが可能な場合もあるが、両足にしびれが出るといった重度の脊柱管狭窄症はもちろん、「動かなくても痛みがある」場合は別の重病の可能性があるので注意が必要だ。
「例えば横向きに寝て安静にしていても疼いて、鎮痛剤を使用してもしばらく頑固な痛みが改善されない場合は、がんの転移など重篤な病気の可能性があるため、必ず医師の診断・検査を受けましょう」(松平医師)
日常の動作に大きく影響する腰の慢性痛。「わざわざ医者に行くのは億劫で……」という人たちも改善を心がけたい。
※週刊ポスト2022年10月21日号