バイきんぐ・小峠英二も審査員
『お笑いの日』開始でイメージアップ
民放他局から警戒されている理由として最もわかりやすいのが、近年の視聴率推移。『キングオブコント』の視聴率は、2019年が個人5.9%・世帯9.4%、2020年が個人6.8%・世帯11.1%、2021年が個人8.2%・世帯12.4%と右肩上がりになっています。
コロナ禍に入って以降、録画に加えて配信視聴が浸透したことでテレビの視聴率は下がり続けていますが、『キングオブコント』に関しては逆に上がりました。しかも昨年は他局を大きく突き放す時間帯トップであり、警戒されるのも当然なのです。
もともと生放送番組は収録番組と比べて、「録画や配信での視聴より、リアルタイム視聴されやすい」というメリットがありますが、それでも2008年から放送され続けている『キングオブコント』は何度かマンネリの危機が叫ばれていました。実際、世帯視聴率は1桁に落ち込むときもあるなど、決して順風満帆とは言えなかったのです。
そんな状況を打ち破るきっかけとなったのが『お笑いの日』という大型特番。『キングオブコント』は、「主にネタ番組を8時間にわたって生放送する」というお祭りムードあふれる長時間特番のトリを務めることになり、息を吹き返したのです。
また、その『お笑いの日』の初回放送は2020年9月26日であり、コロナ初年度の閉塞感を打ち破るようにスタートしたことも、好感度が高い理由のひとつでしょう。今年も『キングオブコント』は、14時から生放送される『お笑いの日』のトリを担うだけに、民放他局にしてみれば、そのスケールの大きさを警戒せざる得ないのです。
ある民放他局のテレビマンに「お笑いの日」について尋ねたところ、「ウチではやりたくてもできない編成」「できれば成功させたくない」などの本音を明かしてくれました。「笑いのTBS」というイメージが定着することの危機感も含め、『お笑いの日』と、そのメインコンテンツである『キングオブコント』は、高視聴率だけでなく脅威の存在なのでしょう。
かまいたち・山内健司も審査員
松本人志がコント披露でプレミア感
『キングオブコント』単体に話を戻すと、近年さらにそのブランドイメージを上げる戦略が見られます。
その最たるところは、2021年6月12日に放送された、『キングオブコント』の歴代出演者がそろうほか、松本人志さんがコントを披露する『キングオブコントの会』。披露するコントはすべて新作であり、豪華な顔ぶれがスペシャルユニットを組む上に、「松本人志のコントが見られるのはこの番組だけ」というプレミア感が前面に押し出されていたのです。
さらに今年の4月9日の放送では、出演芸人を歴代王者と審査員(松本人志さん、さまぁ~ず、バナナマン)に限定することで、ますますステイタスを上げた感がありました。一時は「『M-1グランプリ』(朝日放送・テレビ朝日系)の独走状態」と言われましたが、昨年チャンピオンとなった空気階段が多方面で活躍していることも含め、影響力の部分では、その差が確実に詰まっているのです。
包囲網を敷いているとはいえ、民放他局も「チャンピオンをさまざまな番組に起用できる」というメリットもあるのも事実。「同じ顔ぶれになりがちなテレビ業界の新たなスターを生み出す」という意味でも、現在の『キングオブコント』はこれまで以上に意義深い賞レースとなっているのでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。
ロバート秋山も審査員