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仲本工事さんの事故現場で地元民のひとりは「どうしてここを渡っちゃったのかしら」と嘆いた

花束とお酒、菓子などが手向けられていた事故現場の交差点

花束とお酒、菓子などが手向けられていた事故現場の交差点

 2021年、歩行中に交通事故に遭って亡くなる人のうち65歳以上の高齢者は全体の4分の3を超え、そのうち道路横断中に亡くなった人は7割超の521人。うち近くの横断歩道を渡らずに亡くなった人は68人を数えた(警察庁調べ)。近年の死亡事故の傾向をみて、全国各地で高齢歩行者、とくに横断中の歩行者に注意を促す働きかけが続くなか、ドリフターズのメンバー、仲本工事さんが道路を横断中の事故がもとで亡くなった。俳人で著作家の日野百草氏が、巧みにボケを受け続けた仲本さんが事故に遭った現場を訪れた。

 * * *
 仲本工事さんといかりや長介さんのコント『バカ兄弟』が好きだった。

『バカ兄弟』とは、ザ・ドリフターズ『ドリフ大爆笑』内の1コーナーとして1987年に始まったコントである。

 作業小屋のような場所に兄である長さん演じる「あんちゃん」がやってきてオンボロのすりガラスを叩く。

 仲本さん演じる弟が「だれだ!」と引き戸を開けずに尋ねると、長さんは「あんちゃんだよ」「おまえのあんちゃんだよ」と声をかける。

 しかし弟は引き戸越しに「ほんとにあんちゃんか」「だったら次の質問に答えてみろ」と問いかける。

 その問いの内容は、例えば「新しい内閣総理大臣は」「いまのアメリカの大統領は」という質問だが、あんちゃんは「竹下景子」(正・竹下登)、「ブッシュマン」(正・ブッシュ)と自信満々に答え、弟はそれを聞いてガラッと引き戸を開けて満面の笑みで「やっぱあんちゃんだ!」と小屋に迎え入れる、という感じで始まる名コントである。

 細かいパターンは毎回変わるが、決して頭の弱い人を笑いものにするギャグではなく(クレームによって打ち切られたと言われるが、それはおかしいと思う)、むしろ「無知の知」「経読まずの経読み」で、笑いながらもハッとさせられる内容である。また弟はあんちゃんを尊敬して全肯定、あんちゃんも弟にあれこれ言いながらも付き合ってあげる、とても優しい世界である。こうしたしっかりした、プロの正統派コントも減ってしまった。

 長さんがボケ役というのも珍しかったが、むしろノリノリで演じていたように思う。この「いかりや長介のボケ」を受けるという難題を見事にこなしたのもまた、仲本工事さんである。

 その仲本さんが10月18日、横浜市西区浅間町5丁目の交差点を横断中に車と接触、頭を強く打って意識不明の重体のまま運ばれて翌19日、急性硬膜下血腫でお亡くなりになった。81歳だった。

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