村上は軸足への体重移動が目立たない点に門田氏は注目した(撮影・藤岡雅樹/JMPA)

村上の軸足への体重移動が目立たない点に門田氏は注目した

来シーズンはもっと四球が増える

 門田氏は現役時代、本塁打王に3度(1981年、1983年、1988年)輝き、1981年7月には月間16本塁打のプロ野球新記録(当時)を樹立している。そうした経験から、村上の今後についてこんな言い方をする。

「アベレージヒッターとして素地があるうえにあれだけのパワーがあって、ケガもなかったから56本に到達した。ただ、56本目を打つのに15試合(61打席)かかっています。これはプレッシャーが相当なものだったのではないか。ボクも王(貞治)さんの月間ホームラン15本を抜くまでの間に、大先輩の名前や大量の報道に対して、こんなにも気圧されるのかと感じていました。村上もそうした重圧が勉強になったと思いますが、これからも大変なことは多いので、それにどう立ち向かえるかでしょうね。

 史上最年少三冠王、日本選手最多の56本という記録を作った以上、今後はその看板を背負っていかないといけない。本人が気にしないようにしても、周囲が意識する。打てないとマスコミが騒ぐだろうし、打席では勝負を避けられることももっと多くなるはずです」

 今季の村上はリーグでダントツの118四球を選んでいる(2位の巨人・丸佳浩が80四球)が、来季はさらに数少ないチャンスをものにして数字を残さないといけないという指摘だ。門田氏は「これが最大の難関になる」と続ける。

「今年の村上は自分の打てるボールをひたすら待つことができていたが、もっと勝負を避けられるようになると、体が動き始めるんです。それがスランプを招く要素となる。だから、(勝負を避けられても打てるボールを)待たないといけない。その我慢ができるかでしょうね」

 侍ジャパンの強化試合の後は契約更改があり、来年2月のキャンプまでオフシーズンが続く。門田氏はこう言う。

「これだけ活躍したのだからチャホヤされるでしょうが、誘惑に負けないことですね。ボクらの時代は今のように派手で明るいプロ野球ではなかったので、オフはひたすら体を休めていましたね。温泉につかって散歩するぐらいで、とにかく寝ていた。小さい体をフルに使って野球をしていましたから。三味線でもいい音を出すために、一度弦を緩めるのと同じ。自分が自主トレを始めようと決めた日まで野球のことを忘れ、バットを振ったりしなかった。若いからといって無理はしないことですね。

 村上にとっては、日本シリーズでオリックスに勝てなかったことはむしろラッキーなのかもしれません。すべてが万々歳というわけにはいかなかったからこそ、その悔しさがバネになってオフの過ごし方、来シーズンの戦い方にプラスに働くと思います」

 侍ジャパンの主砲として期待される以上、来年のシーズン開幕前の3月にWBCがあって通常とは違うスケジュールになるが、2年連続三冠王は達成できるのか。村上にとって重要なオフが始まる。

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