2階のリビングから出火。遺体に目立った外傷はなかったという(時事通信フォト)

2階のリビングから出火。遺体に目立った外傷はなかったという(時事通信フォト)

 1990年、村田さんの引退の際、心境を報道陣に問われ「17年間、本当にしんどかったです」と明かした淑子さん。翌年、『兆治さん、わたしの直球受け止めて。―エースを支えた妻のホンネとラブコール』(日本文芸社)を村田さんとの共著で出版。その著書では、引退後の夫婦の生活への希望を綴っていた。

《これまでの私たちは、夫婦であって夫婦ではなかったのだと思います。(中略)やり直すのではなく、第二の青春をこれから夫といっしょに迎えるのだと私は思っています》

 彼女は、40代前半で始まった「第二の青春」について、いきいきと話していたという。

「日本語教師の資格試験に合格するため、週3日学校に通い始めたり、子供2人とアメリカ旅行をしたりと、当時の淑子さんはかなりアクティブに過ごしていました」(前出・別のスポーツ紙記者)

 一方で、夫は変化を拒んでいたようだ。前出の書籍で村田さんはこう綴った。

《「男は仕事、女は家庭」古いと言われようが、これが村田家のスタイルであり、私が現役を引退したからといってかえるつもりは毛頭ない》

 その思いは妻に理解されず、ついに別居となったのだろうか。村田家の知人はこう話す。

「実際はお互いのことを理解し合っていたご夫婦だと思いますよ。村田さんは引退後もずっと好きな野球に携わっていて、奥さんもまた、自分のやりたいことをやっていた。

 ただ、どんどん若々しくなる奥さんに比べ、最近の村田さんは寂しそうでした。別居状態は、かれこれ10年以上続いていましたから……」

 火事から一夜明けた12日、淑子さんは子供とともに、遺品整理のために世田谷の家を訪れていた。

 彼女に声をかけたが、うつむき会釈するのみ。代わりに息子が「せっかく来ていただいて。でも何もお答えすることができないんです。ごめんなさい」と答えた。

 淑子さんにとっても想像していない別れだったのだろう。いつまでも頑固で強い「明治男」の最期は、あまりにも哀しく唐突だった。

※女性セブン2022年12月1日号

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