体に不調を感じた時、まずは薬をのむという人もいるだろう。しかし薬には副作用がある。症状を抑えて病気を治し、健康な生活を送るためにのんでいるはずの薬で体を壊さないために、私たちは何ができるのか。薬剤師の三上彰貴子さんは副作用の危険から身を守るために、こんなアドバイスをする。
「新しい薬をのむときは添付文書をチェックしておくことをおすすめします。自分で調べられなければ、薬局に問い合わせることもできます。なんだかだるいと思っていたら肝障害だったという人や、ただの腰痛だと放置していたら、がんの骨転移だったという人もいます。市販薬の場合、治らないなら薬の量を増やすのではなく、医療機関できちんと診てもらいましょう。
また、アナフィラキシーショックのように重篤な副作用は、服用後遅くとも30分以内に起きます。薬をのんですぐに息苦しい、冷や汗が出るなど、おかしいと思う症状が出たら、すぐに病院に連絡するか、救急車を呼びましょう」
身近な薬でも、予想外の副作用が起きることもある。だからこそ、事前にどんな副作用が起こり得るか知っておくべきなのだ。三上さん自身も、驚くような副作用を経験したことがあるという。
「25年ほど前、抗炎症薬の貼り薬『ケトプロフェン』をふくらはぎに貼って、数週間後に直射日光を浴びたところ、薬を貼っていた箇所の皮膚がやけどのようにただれてしまったことがありました。これは光線過敏症といわれる副作用で、当時はあまり知られていませんでした。娘は抗生剤の『クラリスロマイシン』でまれな副作用の幻聴・幻覚を訴えたこともあります」
副作用の“もと”を断つ、つまり不必要な薬を減らすことも重要だ。北品川藤クリニックの石原藤樹さんは言う。
「アナフィラキシーショックを除いて、副作用は長期にわたる服用によって表面化するものがほとんどです。例えば認知機能低下による認知症は、薬の服用期間が3か月、3年と長くなるほどリスクが高くなる。症状が出る前の“予防的な服用”も、薬を増やす原因になるのでやめること。新型コロナワクチンの副反応に対しても、発熱前に解熱剤をのんだ方がいいという意見もありますが、推奨できません」(石原さん)
多剤併用による副作用が疑われる場合は、かかりつけ医か、かかりつけ薬局に総合的な判断を仰ごう。日本初の「薬やめる科」を開設した松田医院和漢堂院長の松田史彦さんのクリニックでは、生活習慣病の薬の断薬に加え、減薬が難しいとされる睡眠薬や抗うつ薬の減薬も行っている。