芸能

追悼・藤子不二雄Aさん 姪が語る「手塚先生が頼んだうなぎで鼻血」のエピソード

藤子不二雄Aさん

藤子不二雄Aさん

 日本を代表する漫画家で、『忍者ハットリくん』『怪物くん』などの作品を手がけた藤子不二雄Aさんは2022年4月6日、この世を去った。藤子さんの姪で、「藤子スタジオ」の社長でもある松野いづみさん(63才)はこう振り返る。

「定期的に通っていた病院に行くために自宅を訪ねたら、庭に倒れていたんです。慌てて救急車を呼びましたが、すでに亡くなっていて……。

 3月まではゴルフも頻繁にしていたし、会話も普通にしていたんです。突然のことで、何が何だか、いまだにわからないでいます」(松野さん・以下同)

 藤子不二雄Aこと安孫子素雄さんは、藤本弘(藤子・F・不二雄)さん(享年62)との共同ペンネームで「藤子不二雄」として活動。1987年にコンビを解消し、藤子不二雄Aとして『笑ゥせぇるすまん』などの作品を手がけた。漫画家の石ノ森章太郎さん(享年60)、赤塚不二夫さん(享年72)らと東京・豊島区に居住していたトキワ荘時代(1954〜1961年)は、藤子さんの実姉である松野さんの母親が1955年からともに暮らし、食事の面倒を見ていたという。

「藤子は、肉や魚が食べられませんでした。手塚治虫先生が出前に取ってくれたうなぎを、一切れ食べた直後、3秒ほどで大量の鼻血を噴出したというエピソードがあります。これは誇張ではなく本当にあった出来事だと聞いています。実家が曹洞宗のお寺で、幼少の頃から精進料理ばかりを食べていたため、体が受けつけなかったようです。

 トキワ荘を出てからは、同居していた私の母、祖母が食事の世話をしながら、健康のためにたんぱく質を摂ってもらいたいといろいろ工夫していました。

 晩年は、よく焼いた焼肉なら少しだけ食べられましたね」

最大の直筆原稿

最後の直筆原稿

 松野さんは身内として身の回りの世話をしつつ、仕事場では漫画家の秘書としての役割も果たしていた。

「自宅からスタジオまで車で送迎していた時期は、他愛もないことから作品のアイディアまで、2人でたくさん話をしました。2人だけの空間ですから何を言っても大丈夫だと気楽に話すことができたんでしょう。

 あの時間はいまでも大切に思っています」

 80才を過ぎ、思うような線が描けなくなったことから画業は卒業。それでも日常的に書くメモには、ちょっとしたイラストを描くことも多かった。

 最後の作品は、『ビッグコミック』(小学館)で連載していた『藤子不二雄A&西原理恵子の人生ことわざ面白“漫”辞典2』のエッセイで、亡くなる数日前に書き上げたものだった。タイトルは「思わぬ災難」。なんとも意味深なタイトルだ。

「あまりにも突然のことで、お別れの会(10月31日)を終えたいまでも信じられない気持ちで写真にあれこれ語りかけています。

 いろいろな作品がありますが、私は子供の頃から『怪物くん』がいちばん好きでした。『いづみは怪物くんが好きすぎるから』と言い、この話をするときは照れくさそうでした。いま思うと、社長としては『少し引いて、冷静に作品を見なさい』と言いたかったのかもしれないですね」

【プロフィール】
松野いづみさん/藤子さんの姪で、藤子不二雄Ⓐ作品の著作権管理会社「藤子スタジオ」の社長。生前は、藤子さんが会長を務めた。前社長は藤子さんの実姉で、松野さんの母親。

取材・文/山下和恵

※女性セブン2023年1月5・12日号

藤子作品の名作を集めたデジタルセレクションでは、全215冊が読める。最大2巻無料試し読み可。https://fujiko-a.com

藤子作品の名作を集めたデジタルセレクションでは、全215冊が読める。最大2巻無料試し読み可。https://fujiko-a.com

直筆原稿を収録した「藤子不二雄Ⓐ&西原理恵子の人生ことわざ面白“漫”辞典2」

直筆原稿を収録した「藤子不二雄A&西原理恵子の人生ことわざ面白“漫”辞典2」

藤子さん(右)と松野さん(左)

藤子さん(右)と松野さん(左)

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン