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箱根駅伝「シューズ戦争」にミズノが参戦 「厚底ありきでなく短距離スパイクの発想で開発した」

箱根駅伝のシューズ戦争は「ナイキ1強」に見えるが……(時事通信フォト)

箱根駅伝のシューズ戦争は「ナイキ1強」に見えるが……(時事通信フォト)

  正月の風物詩となっている箱根駅伝の選手たちの「足元」に異変が起きたのは2018年のことだった。それまではアシックスなど国産メーカーのシューズを採用する選手が多かったところに、「ナイキの厚底」という“黒船”が襲来し、景色は一変した。そして今回の第99回大会を前に、ナイキの後塵を拝した各メーカーは、巻き返しに躍起となっている。

 2017年7月に発売されたランニングシューズ界の革命児とも言える存在が「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」だった。それまでランニングシューズは薄くて軽いタイプのものを使うのが“常識”だったが、ナイキはカーボンプレート入りの厚底シューズを投入。世界のトップ選手がナイキに履き替えて次々と好記録を出したことで、シェアを一気に拡大させた。

 日本の正月の一大イベントである箱根駅伝でも、ナイキ旋風が吹き荒れる。2018年にいきなり出場選手のナイキ着用率が27.6%に伸びると、2019年に41.3%、2020年は84.3%までシェアを拡大。さらに2021年には着用率95.7%とほぼ独占状態となり、かつて国内メーカーとしてシェア最大を誇ったアシックス着用者は1人もいなくなった。

 ナイキが火付け役となった厚底ブームに各社が追随し、開発競争が激化。アディダス、プーマが参戦し、国内メーカーもアシックスが厚底開発プロジェクトを発足させ、「メタスピード」シリーズを発表。2022年の元日には、アシックスが日経新聞に全面広告を打ち、〈わたしたちは、何度でも起き上がる〉というコピーで反撃の狼煙を上げた。直後の箱根駅伝ではアシックスの厚底シューズの着用率が11.4%まで回復。ナイキのシェアを73.3%にまで押し戻した。

 そうしたなか、厚底シューズの開発競争を静観していた国内メーカーのなかからも新たに参戦する勢力が出てきた。2022年秋にミズノとデサントが相次いで厚底シューズを発売。

 ミズノが初めて開発した厚底シューズは「WAVE DUEL PRO」と「WAVE DUEL PRO QTR」の2種類。同社のコーポレートコミュニケーション室の担当者は「短距離スパイクの発想を用いた長距離スピードランナー向けのシューズで、他社にはない新しい発想で開発しました」と説明する。

 同社の新シューズの特徴は極端にかかとの上がったハイヒールのようなソール形状。靴底の中足部が非常に厚くなっており、前足部から中足部が接地することでかかと部分が浮いたつま先立ちの状態になる。前出の担当者によれば、シューズ開発は決して“厚底ありき”ではなかったという。

「厚底からのスタートではなく、短距離スパイクと同じように“かかとをつかない走り方”が最も速く、その走り方で42.195キロを駆け抜ければ好記録になるはずだという発想から生まれたシューズです。結果的に厚底スパイクになったが、ハイヒールのようなソール形状によってランナーにとっての理想的な足の運びに近づけると考えた。ミッドソール内部にカーボン繊維で強化されたプレート(ミズノウエーブ)を搭載することで、かかとをつけない状態でも足を支えられるように設計されており、ふくらはぎへの負担を軽減してスムーズなフォアフットランニング(前足部接地走法)をアシストしてくれます」

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