ライフ

日本人は何をどう食べるべきか 予防医学の第一人者が解説する遺伝子と食と健康の関係

白米を主食にする国は多い

お米は日本人の体質に合う

「体にいい」はずの食べ物で、かえって体調が悪くなったことはないだろうか。それは遺伝子レベルの拒否反応かもしれない。私たちの体が本当に欲する栄養は一体何なのか。長年、日本人の「遺伝子」と「体質」を研究してきた予防医学の第一人者である内科医・奥田昌子さんが解説する。【短期集中連載1回目】

 * * *
「牛乳を飲んでカルシウムをしっかり摂取」「白米をやめればやせる」「ヨーグルトで腸の善玉菌を増やそう」。テレビや雑誌には健康情報があふれています。ただ長生きするのではなく、元気に長生きしたいと願う人は多いでしょう。しかし、これらの健康法は日本人にも効くのでしょうか。

 世界各地で暮らす人々は少しずつ遺伝子を変化させながら、その土地の食文化、生活習慣、気候風土に適応し、それぞれ異なる体質を身につけました。たとえば、日本人は伝統的にお米をはじめとする穀物を食べてきたため、肉と乳製品が食事の中心だった欧米人とは胃の形も腸の働きも違います。

 穀物には食物繊維が多いので、消化するのに手間がかかります。そのため、日本人の胃は袋のように縦に長く、出口が高いところにあって、食物繊維を粉々に砕いてから腸に送り出せるようになっています。そして腸には、穀物が含むでんぷんを消化して、栄養をしっかり引き出すのに役立つ腸内細菌がたくさんすんでいます。

「お米は太るから食べない」という人がいますが、日本人は食べたお米を効率よくエネルギーに変えることができるため、食べても体を充分に動かしてさえいれば、肉や乳製品とくらべて、むしろ太りにくい食品といえます。

 もう1つの例が、日本人はお酒に弱い遺伝子を持つ人が多いことです。お酒に強い方が楽しめるのに、と残念に思うかもしれませんが、実は日本人はお酒に弱いからこそ生き残ってこられたと考えられています。

 飲んだアルコールは肝臓でアセトアルデヒドという有害物質に変わります。お酒に弱い人はアセトアルデヒドを分解する力が弱いため、アセトアルデヒドが体にたまります。

 これだけ聞くと悪いことのように思えますが、アセトアルデヒドには寄生虫を死滅させる力もあるのです。そのため、古い時代にマラリアなどの病気を引き起こす寄生虫が水田で繁殖したときも、日本人は血液に溶けているアセトアルデヒドのおかげで寄生虫が体内で活発に活動できず、その結果生き延びやすかったようです。実際に、日本でマラリアが近代まで発生していた地域は、お酒に弱い人が最も多い地域でもあります。

 体内にアセトアルデヒドがたまりにくい人、つまりお酒に強い人はマラリアのまん延を生き抜けなかった可能性があるのです。

関連記事

トピックス

代理人・バレロ氏(右)には大谷翔平も信頼を寄せている(時事通信フォト)
大谷翔平が巻き込まれた「豪華ハワイ別荘」訴訟トラブル ビッグビジネスに走る代理人・バレロ氏の“魂胆”と大谷が“絶大なる信頼”を置く理由
週刊ポスト
スキンヘッドで裸芸を得意とした井手らっきょさん
《僕、今は1人です》熊本移住7年の井手らっきょ(65)、長年連れ添った年上妻との離婚を告白「このまま何かあったら…」就寝時に不安になることも
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
《広陵高校、暴力問題で甲子園出場辞退》高校野球でのトラブル報告は「年間1000件以上」でも高野連は“あくまで受け身” 処分に消極的な体質が招いた最悪の結果 
女性セブン
大臣としての資質が問われる(写真/共同通信社)
三原じゅん子・こども政策担当相が暴力団とゴルフ写真の“反社疑惑”にダンマリの理由「官邸は三原氏のことなど構っていられない」
週刊ポスト
お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
NEWSポストセブン