3.11の「最大余震」に警戒
鎌田:東北地方でも地震が続いている印象ですが、二人はどう見ていますか。
中島:2022年3月16日に福島県沖でM7.4の地震が発生しましたが、2022年に日本で観測された地震のなかで最大震度(震度6強)でした。これは地中に沈み込む太平洋プレート内で起きたもので、2021年2月にもほぼ同じ場所でM7.3の地震がありました。いずれも「東日本大震災」(3.11)の余震とみられ、2023年もまだ続くと考えられます。
長尾:我々が一番心配しているのは、「東北では3.11の最大余震がまだ起きていないのでは」ということです。1896年「明治三陸地震」(M8.2)の37年後に「昭和三陸地震」(M8.1)が起きましたが、両者はある意味ペアの地震です。沈み込む太平洋プレートの境界で発生した前者に誘発され、日本海溝の外側(東側)の断層で昭和三陸が起こったと考えられています。
3.11でも同様の現象が今後数十年以内に起こるだろうというのは、多くの地震学者の共通認識です。怖いのは、震源が陸から遠いので、揺れを感じにくい一方、大きな津波が押し寄せやすいことです。「昭和三陸地震」の時は震度4から5程度の揺れでも、20m以上の津波が観測されました。
鎌田:日本海溝の外側で発生する地震を指す、いわゆる「アウターライズ地震」ですね。ただ「アウターライズは、起こらないのでは」との意見も専門家の間でありますね。
長尾:事例が少ないため、まだ確率は示せませんが、発生する可能性は排除しないほうがいいでしょう。
中島:実際、3.11の余震でもM7クラスのアウターライズ地震が2つありました。今後、M8クラスが発生する可能性もあるので警戒が必要です。
被害額は「250兆円」
長尾:そして今後最大の警戒が必要なのが、「南海トラフ巨大地震」です。2022年1月に宮崎県東部沖合の海域で「日向灘地震」(M6.6)が発生しましたが、JAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)の堀高峰博士の解析では、日向灘でM7クラスが起これば南海トラフ巨大地震の引き金になるとのシミュレーション結果もあります。
さらに2022年3月以降に群発地震が起きた内陸の京都府南部や紀伊水道で地震活動が活発化していることも、南海トラフ巨大地震へのステップと考えられるでしょう。
鎌田:京都府南部の群発地震は、日本有数の活断層密集地帯である“近畿トライアングル”のすぐ西側で起きました。南海トラフ巨大地震に向けて内陸地震が増えてきたと解釈できます。