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養老孟司氏×和田秀樹氏【対談・どう健康に生きるか】コロナ以来「生きることが疎かになっている」

養老孟司氏はコロナ以来、「生きることが疎かになっている」ように感じるという(時事通信フォト)

養老孟司氏はコロナ以来、「生きることが疎かになっている」ように感じるという(時事通信フォト)

『80歳の壁』のベストセラー医師として知られる和田秀樹氏と解剖学者・養老孟司氏。師弟関係に当たるお二人に、2023年を「どう健康に生きるか」というテーマで話し合ってもらった。【前後編の後編。前編から読む

 * * *
養老:迷惑をかけない限り、自分が好きなように生きる基準をはっきりさせることは大事です。

和田:我々がよく共産主義の国々を批判する時に「あいつらには自由がない」と言うけど、ここしばらくの日本を見ると、命のためには移動の自由であろうが営業の自由であろうが、どんな自由も簡単に放棄している。「命のためなら自由が奪われても仕方ない」という態度は、医者に「血圧が高いから塩分を控えるように」と言われて好きなものを我慢することにも通じます。

養老:コロナ以来、死ぬことのほうが中心になってきて、「生きることが疎かになっている」ように感じます。天気がいい時はこういう議論をするよりも、外に出て陽の光を浴びるほうが、よっぽど気持ちがいい(笑)。

和田:先生も昆虫がお好きなように、やっぱり楽しいことがあると、生きている感じが増すんじゃないでしょうか。

養老:世の中の付き合いがあるからなかなか時間が取れませんが、今でも虫をいじっていたいとは思っています。ただ、それだけにこもってしまうとそれはそれで不健康。生きることも死ぬことも、適当に距離を取るのが大事じゃないでしょうか。

和田:私はおそらく養老先生ほど悟っておらず、何か楽しいことをしていないと生きている気があんまりしません。だから美味しい食事やワイン、映画創りのことばかり考えています。養老先生と違い、私は検査データが悪い結果のデパートで、それでも医者の言うことを聞かないのは、そういう楽しみがないと生きている気がしないからです。

養老:私も検査値がどうであろうと、虫取りの季節が来たらどこにでも行っちゃいます(笑)。感染症が怖いなんて思ったら行けません。私がよく行くラオスのジャングルは、うっかり蚊に刺されればマラリアやデング熱が普通にあるところ。それでも、ほぼ毎年のように行って、一度も病気になったことはありません。

他人に生き方を聞くな

和田:そうやって生きることを楽しんでおられるから免疫力が上がっているのかも。養老先生のように哲学者でもあり、周囲が期待する作家でもあり、解剖学者でもあるのに、自分だけの昆虫の楽しみに多くを捧げるのは素敵だと思います。

養老:そうですかね。ただ好きなことをやっているだけで……。もし、好きなことがない、生きることを楽しめないという人がいたら、「社会のことを考えすぎないで、自分のことを考えなさいよ」と余計な忠告をしたいですね。まずは自分が何をしたいかを見極めないと話になりません。

 私の友人の池田清彦(生物学者)は、75歳で毎日酒を飲み続けていますが、それこそ彼に「健康に悪いからやめろ」とは言いません。飲んでいる時が一番似合っているから。自他ともにその人らしい生き方というのがあると思うんです。

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