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追悼・門田博光さん「監督にならなかった名選手」が語っていた「野球指導は難しい」

現役時代は通算567本塁打を放った門田さん(撮影・杉原照夫)

現役時代は通算567本塁打を放った門田さん(撮影・杉原照夫)

 プロ野球の南海などで活躍し、40歳にして本塁打、打点王に輝いて「不惑の大砲」と呼ばれた門田博光さんが亡くなった。74歳だった。通算567本塁打、同1678打点はいずれも歴代3位の記録だが、引退後にプロ野球の世界で監督となることはなかった。しかしながら、現役選手の解説に際しては確かな“観察眼”を披露していた。

 プロ野球で第一線を張る選手たちをどう見ているのか、門田さんは本誌・週刊ポストの取材に何度も答えてくれていた。昨年の日本シリーズ終了後には史上最年少で三冠王に輝いた村上宗隆(ヤクルト)について、「ボクには村上がホームランバッターではなく、アベレージバッターに見えるんですよ」と語っていた。その理由について門田さんはこう続けたのだった。

「(頭から両足が)二等辺三角形で始まり、二等辺三角形で終わる。つまり軸足にはあまり体重を乗せず、体重移動をしないで打っている。これは安打製造機と呼ばれるようなバッターの打ち方なんですよね。我々が教わったのは軸足に体重を乗せ、インパクトの瞬間にパワーを全開させるために体重移動をして遠くへ飛ばそうとするやり方。軸足に体重を移すところからインパクトに向けて、出力を『弱』から『強』へと上げていくイメージです。村上はその『弱』がなくて、ゼロからいきなり『強』になる印象。若さと恵まれた肉体があるからできること」

 村上は昨年、シーズン56本塁打を放ち、王貞治さんの持つ日本選手最多記録(55本)を更新した。門田さんは1981年7月に当時の日本記録となる月間16本塁打を達成しているが、この記録もまた王さんの記録を塗り替えるものだった。その経験と重ね合わせながら、こんなふうに話していた。
 
「(村上が56本目を打つまでに時間がかかったのは)プレッシャーですよ。ボクも月間ホームラン記録の時は、大先輩の名前にこんなに気圧されるのか、報道にこんな重圧を感じるのか、と思った。村上も勉強したでしょうが、この先もいろんなことがある。それにどう立ち向かえるかでしょうね。

 来季以降は、史上最年少三冠王、日本選手最多の56本という看板を背負っていかないといけない。56本打ったことでみんなが意識する。打てないとマスコミが騒ぐだろうし、打席では勝負を避けられることが多くなる。勝負を避けられるようになると体が動き始め、スランプにつながる。それでも(打てるボールを)待たないといけない。その我慢ができるかでしょうね」

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