ジョンソン英首相(当時)が建設中のヒンクリーポイントC原発を訪問。2022年4月。英国は2030年までに最大8基の原発を新設し、2050年には電力需要のうち最大25%を原子力発電でまかなう(PA Images/時事通信フォト コレクション	PA)

ジョンソン英首相(当時)が建設中のヒンクリーポイントC原発を訪問。2022年4月。英国は2030年までに最大8基の原発を新設し、2050年には電力需要のうち最大25%を原子力発電でまかなう(PA Images/時事通信フォト コレクション PA)

 歴史的な危機と言っても過言ではないエネルギー高騰による電気代とガス代の凄まじい値上がり、筆者も現在の戸建てに住んで20年、それまで見たこともない電気・ガスの請求書を受け取っている。おそらく日本中の大半はそうなのだろう。これは本当に「恐怖」でしかない。政府は「電気・ガス価格激変緩和対策事業」として2023年1月から電気代やガス代の補助(契約料により条件あり)を決めたがプロパンガスは除外であり、また現時点では2023年9月使用分までしか予定されていない。そしてこのままでは本当に欧州各国のように電気代やガス代は2倍どころか3倍、いやそれ以上になってしまうかもしれない。

 エネルギー自給率12.1%の日本、石油はもちろん液化天然ガスも石炭も3倍どころか5倍、石炭に限れば7倍と高騰し続けている。このどれもが「ほぼ日本の国土で賄えない」資源である。電気代が高いどころか電力不足の可能性すらある状況、もはや覚悟を決める時が来た、と言っても過言ではない。地熱だ、ソーラーパネルだは有効かつ将来的に大事かもしれないが、私たちの「いま」にとっては「それじゃない」ように思う。

 イギリス在住の知人いわく、電気とガスで月8万(2022年12月)、国情や物価の違い、多少の補助金は出るにせよ、30年間賃金は上がらず増税と物価高の続く日本で、こんな金額に耐えられる一般家庭がどれだけあろう。今回の取材で他にも多くの異口同音としての「嘆き」「悲鳴」を聞いたが、電気代やガス代の歴史的高騰、筆者も個人的に「恐怖」しかない。もはや節約がどうだの範囲を超え始めている。

 この高騰は電気代やガス代が高いだの以上に、私たちの人生と国家存亡の危機の端緒ではないか。化石燃料や原子力の懸念と日常生活という「環境か生活か」どちらを取るかの選択をヨーロッパ同様に迫られている。1月20日、ついに東京電力も一般家庭向け電気料金を3割前後値上げすると申請した。一般家庭はもちろん、法人契約でない小売店舗や飲食店もまたさらに厳しくなるに違いない。

 もはやイデオロギーにとらわれることなく、古い火力発電所の活用、原発再稼働の可否も含め、老若貴賤貧富の関係なく、日本国民全体で早急に決めないと取り返しがつかなくなる。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員、出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

 

関連記事

トピックス

谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン