中国の国立大学入試の前に、教室で監視カメラのライブ映像を映し出す大画面をチェックする中国の試験官。この入試では顔認識、指紋認証、金属探知機などの複数のチェックポイントを通過した後、ようやく学生は入学試験を受ける無線シールドが張り巡らされた試験会場へ入れる(Imaginechina/時事通信フォト)
AI(機械学習)による人事コンサルティングサービスの株式会社アッテルが行った企業における採用担当者を対象とした調査(2021年4月)によると、「採用選考時のWebテストにおいて、なりすまし受験(替え玉受験)を課題に感じているか?」という質問に対して66%が「はい」と回答しており、企業も実態を懸念している状態だ。
オンラインでAI監視も残る課題
替え玉受験の対策も行われている。たとえば、Zoomなどのビデオ通話機能を使って、AIが監視したり、監視員が目視する対策や、事前に免許証や学生証をモニターに提示し、受験生の本人確認なども行われている。
しかし、今回逮捕された容疑者は、試験を受ける学生のテスト画面を自分のパソコンで共有し、答えをイヤホンで伝えていたという。このように巧妙に偽装するケースを考えると、残念ながらオンライン替え玉受験を完全に見破ることは難しいだろう。
SNSの利用拡大によって、匿名で依頼したり、受けたりしやすい環境が整っていることで、手軽に不正を行えるようになった面はあるだろう。実際には狭い界隈しか見えていないにもかかわらず、SNSによってみんながやっているように見え、罪の意識も感じにくいということも影響しているかもしれない。
しかし、たとえバレずに不正で入社できても、試験結果が入社後の昇進や配置にも使われる場合があり、ミスマッチが起こり、早期退職につながるケースもある。代行依頼の時に様々な個人情報を渡すことになるため、入社後も不正をバラされるリスクを抱えることになる。デメリットがけして少なくないことは、知っておくべきだろう。
今回、容疑者が摘発されたことで代行アカウントは減少している。就職活動中のある学生は、
「知人がやっていたと聞いたことがある。でも、就活生も逮捕されたのを知り、割に合わないと思った。自力で何とかしたいと思う」
と答えてくれた。実際、こんなことで未来ある学生が罪に問われることは避けるべきだし、たとえ誘惑にかられても不正にはけして手を染めないことが大切だ。
大学受験でも就活でも、ネットを悪用した不正受験をすると罪に問われる。未来ある学生はけして手を出すべきではないし、今後も横行が続くのであれば、実施側も根本的な解決策を模索する必要があるだろう。