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長野県の豪商、名家・田中家「日々の暮らしは素朴に、お客さまにはもてなしを」

庭園内の築山には青龍を祀った社があり、毎月1日の当主が参拝する。その青龍を拝する場所に「礼拝石」があり、普段はそこから感謝を伝えるという

庭園内の築山には青龍を祀った社があり、毎月1日の当主が参拝する。その青龍を拝する場所に「礼拝石」があり、普段はそこから感謝を伝えるという(撮影/楠聖子)

 礼儀作法を重んじ、代々家を守り続けてきた“名家”とは、どういったものなのだろうか──。長野県須坂市の豪商として知られる「田中家」の暮らしに迫る。

田中家とは 須坂藩下の豪商で市長も輩出

 長野県須坂市の豪商。江戸時代中期に穀物、菜種油、たばこ、綿、酒造業などの商売を始め、須坂藩の御用達となる。その財力は須坂藩を上回るほどに。後に名字を許され士分となり、江戸にも進出。須坂藩の御用商人として江戸藩邸の財政を任された。第11代当主・田中太郎さんは県議や須坂市長を務めた。現在は本家の邸宅を「豪商の館 信州須坂 田中本家博物館」(住所:長野県須坂市穀町476)として公開。須坂藩主も愛でたという池泉回遊式庭園は一見の価値あり。

いつも感謝の気持ちを持って、心からお辞儀を

 野球場一面に該当する約3000坪の敷地に、邸宅と庭園のほか、20の土蔵を有する田中家。その一部は現在、「豪商の館 信州須坂 田中本家博物館」として公開されている。館内には、実際に使用された器や美術品、婚礼衣装など、江戸時代から昭和初期までの品が約6万点、展示・収蔵されている。

 記者が博物館併設の喫茶室「龍潜」で庭園を眺めていると、穏やかな笑顔をたたえた第12代当主夫人・田中洋子さんが、深く頭を下げて丁寧なあいさつをしてくれた。

「私は祖母から“お行儀よく”とよく言われて育ち、あいさつやお辞儀の仕方をはじめ、言葉遣い、扉の開け閉めなどの礼儀作法を教わりました。特にお辞儀の仕方で尊敬の念が相手に伝わるもの。ですから、いつも感謝の気持ちを持って心から頭を下げるようにしています」(田中洋子さん・以下同)

 豪商の家に生まれたが、洋子さんの暮らしぶりは慎ましい。

「寛政年間(1789~1801年)に第2代当主・信房が作った『家訓家定書』に家の決まり事が書いてあり、それに沿った作法を教えられてきました。大切なのは日々の暮らしは素朴にし、お客さまがいらしたときは、もてなすようにということ。私はお料理が好きなのですが、食べたかたがおいしいと言ってくだされば私もうれしいので、おもてなしの料理に手間暇をかけても苦にならないんです」

 喫茶室での料理は洋子さん自らがメニュー作りにかかわり、訪れた人をもてなす。

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