芸能

時代劇研究家が綴る、TVが「電気紙芝居」と揶揄された時代に大河ドラマに佐田啓二が出演した驚き

中村七之助

『大河ドラマが生まれた日』では中村七之助が佐田啓二を演じた

 現在は松本潤主演の『どうする家康』(NHK)が放送される大河ドラマ。その第一弾が放送されたのは60年前のことだった。話題を呼んだドラマ『大河ドラマが生まれた日』(NHK)の内容とともに、大河の秘話について時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが綴る。

 * * *
 4日に放送されたNHK『大河ドラマが生まれた日』(20日に89分特別版放送)は、テレビ70年、大河ドラマ60年を記念し、63年に放送された大河ドラマ第一作『花の生涯』完成までの泣き笑いエピソードがつづられた。テレビがモノクロだったころを知らない世代には、びっくりするシーンばかりだったと思う。

 物語は、NHK芸能局の若手アシスタントディレクター山岡(生田斗真)が、局長(中井貴一)から、「映画、歌舞伎、新劇の大スターを勢揃いさせて、新感覚の連続大型時代劇を作り出せ」と命じられたことから始まる。作品は、幕末の大老・井伊直弼を主人公とした『花の生涯』に決まり、山岡は上司の楠田(阿部サダヲ)とキャストの出演交渉を始めるが、当時は映画会社が専属俳優をテレビに出演させないと定めた「五社協定」という大きな壁が。

 それでも映画界の大スター、佐田啓二(中村七之助)に出てもらおうと、山岡は佐田の自宅に日参し、頭を下げ続ける。テレビに出ると「芸が腐る」とまで言われた時代。交渉は進まず、山岡もあきらめかけたギリギリのところで佐田の出演が決まる。

『花の生涯』は、井伊直弼を二代目・尾上松緑、直弼と深く関わる長野主膳を佐田、彼を敬愛する女、村山たかを淡島千景という豪華キャストが実現、大きな反響を呼ぶ。他にも田村正和、芦田伸介、二代目黄門様として親しまれた西村晃など、後にテレビで多くの主演シリーズを持つキャストが出演していることを考えると、テレビの未来を感じさせるドラマだったと改めて思う。

 私はテレビ黎明期の取材を続ける中で、『花の生涯』はじめ初期の大河ドラマの関係者に話を聞く機会があった。当時の娯楽の王様は映画で、テレビは「電気紙芝居」と揶揄され、放送局内でもラジオからテレビに異動になると「左遷」と言われていたという。そんな中での『花の生涯』佐田啓二出演は、テレビの歴史に残る画期的な出来事だった。

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