スポーツ

蛯名正義氏が振り返るコロナ禍の競馬界 「イレギュラーな経験を未来に活かしたい」

コロナ禍の競馬界を振り返る

コロナ禍の競馬界を振り返る

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動している。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、新型コロナウイルスの影響を受け続けた3年間についてお届けする。

 * * *
 新型コロナの感染症法上の分類が5月の連休明けからインフルエンザなどの感染症と同じ5類に引き下げられることになるようです。思えばこの3年間、競馬の世界もコロナの影響で大きく揺れ、縛られ、振り回されました。

 2020年2月末から10月まで、JRA史上初めて「無観客競馬」となりました。この年はコントレイル、デアリングタクトと3歳牡牝がどちらも三冠馬という競馬史上に残る1年。他にもアーモンドアイやグランアレグリア、クロノジェネシスなどが活躍しましたが、その走りを生で見ることができたのは限られた人だけで、今日は本当にGIだっけと思ったりしたものです。

 個人的なことを言えば2021年2月いっぱいで騎手を引退した時も、お客さんの前でご挨拶をすることがかないませんでした。長い間応援してくれたことに対する感謝の気持ちを伝えることができなかったのは今でも心残りです。

 その後競馬場へは段階的に入場者が増えてきましたが、相変わらずさまざまな規制があって、窮屈な思いをされているのではないかと思います。マスクをするのはしょうがないにしても、大声を出さないで応援するのって難しいですよね。我々にしてもスタート時や直線で歓声がないのは、やはり寂しかった。「歓ぶ声」は騎手のモチベーションを高めてくれる大事な要素なのです。

 コロナ禍以前、ウイナーズサークルでの記念撮影を終えた勝利ジョッキーが、次のレースへの騎乗がない時に限り、即席のサイン会が開かれていたのを覚えているでしょうか? 僕も何度かファンの方々と触れ合うことがありました。時間的にそれほど長くはないのですが、とてもいいひと時でした。競馬が終わってからのチャリティー握手会やトレーニング・センターが主催していた見学会なども中止になりました。競馬サークルの日常に触れ、厩舎を訪ねて調教師や厩務員と直接話をしたりするというイベントは、とても好評だったと聞いています。

 トレーニング・センターの日常でいえば、騎手の厩舎回りが禁止されました。若い騎手は他厩舎の手伝いをすることで可愛がってもらったりすれば、乗る馬も増えてくる。そうやって築き上げていく人間関係はとても大事。それでも活躍している騎手はいいけれど、乗鞍が少ない若手騎手はさらに厳しくなっていたはずです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン