2009年のWBC決勝・韓国戦で、決勝の2点タイムリーを放ったイチロー(時事通信フォト)

2009年のWBC決勝・韓国戦で、決勝の2点タイムリーを放ったイチロー(時事通信フォト)

不調の岩瀬を起用し続けた星野ジャパン

 一方、選手と心中して失敗した例もある。2008年、北京五輪での星野仙一監督は中日時代の教え子である川上憲伸や岩瀬仁紀を不調でも起用し続け、金メダルを有望視されながら4位に終わった。

「シーズン中先発の川上を中継ぎ、クローザーの岩瀬を同点の場面やイニング跨ぎで起用した。岩瀬は予選の韓国戦、アメリカ戦で打たれて2敗を喫した。明らかに調子が上がっていなかったが、準決勝の韓国戦でも同点の8回という最も大事な場面で投げさせて、決勝2ランを浴びた。岩瀬には4試合0勝3敗、防御率11.57という成績が残りました」

 中日に戻った岩瀬は、復帰初戦でクローザーとしてセーブを挙げた。この時、落合博満監督は「ちゃんとした使い方をすれば抑える」と言い放った。

「日本シリーズで打てない“逆シリーズ男”が必ず出てくるように、短期決戦では誰かが不調に陥る。監督がその選手に配慮して使えば、チームが迷走する。過去の国際大会を見れば、特定の選手との心中は危険です。代表選手になれば、個々の能力の差はあまりないと言っていい。1人にこだわると、控えの選手から不満が出ることもある。村上の今の状態が続くようならば、思い切って打順を7番、8番辺りに下げてもいい。2009年のWBCでは原辰徳監督が不調のイチローを使い続け、韓国との決勝戦でイチローは4安打しましたが、当時世界一のバッターでしたからね。イチローと今の村上を同格に考えるのは無理があります」

 村上は東京五輪の決勝で先制ホームランを放ったり、シーズン最終打席で王貞治の記録を抜く56号を打ったり勝負強い一面を見せている。

「本番でも期待したいです。ただ、プレッシャーが掛かると力む傾向もある。一昨年、巨人の岡本和真が先にシーズンを終えた時点で、ヤクルトの村上は残り3試合あった。単独のホームラン王と打点王が取れそうな状況でした。その1試合目は猛打賞でしたが、2試合目は4打数ノーヒット2三振、3試合目は5打数ノーヒット4三振でした。

 何度もチャンスの場面で回ってきたにもかかわらず、打点を1つも挙げられず、1打点差で打点王を逃し、ホームラン王は分け合う形になりました。昨年も55号を打ってからホームランが出なくなったり、日本シリーズでも不調になったりした。村上はプレッシャーを感じると、力が入り過ぎる傾向がある。東京五輪の決勝は8番でした。そのくらい気楽に打てる打順で試せば、復調するかもしれません」

 史上最年少の三冠王と言っても、まだ23歳の村上に過度な期待は酷というもの。阪神、オリックスとの壮行試合でも結果が出なければ、栗山監督は村上の起用法を再考するのか。それとも、心中するのか。その決断が侍ジャパンの運命を握りそうだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン