国内

住民12人のうち5人が殺された山口の限界集落「つけびの村」で“村おこし”に励む60代男性の奮闘

山口放火殺人・男の自宅に残された貼り紙この張り紙は大きな話題になった(時事通信フォト)

山口連続放火殺人では犯人宅に張られた川柳も話題になった。そして、10年が経った(時事通信フォト)

 2013年に起きた山口連続放火殺人事件。5人を殺害した犯人宅に貼られた「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という川柳のインパクトはすさまじく、集落は「平成の八つ墓村」とも呼ばれた。あれから10年、村はどうなっているのか。事件の真相を追ったノンフィクション『つけびの村』の著者であるライターの高橋ユキ氏が、文庫化にあたり村を再訪した。

 * * *

 山口県周南市の山間部、人口12人(当時)の小さな限界集落で起こった殺人放火事件。犠牲になったのは、集落に住んでいた住民5人だった。

 2013年7月21日の夜、集落の民家が突如燃えたとして消火活動が始まった。すると、また別の家からも火が出た。ようやく火が消し止められた後、焼け跡からは3人の遺体が発見された。この時点まで、彼らが亡くなったのは火事によるものだと思われていた。ところが翌日昼。別の民家2軒で、撲殺された2人の住民が発見されたことから、これは集落で発生した大量殺人なのだと判明したのである。

 事件を起こしたのは、犠牲者のうち1人の隣家に住む、Uターン組の男・保見光成死刑囚(当時63)。彼は事件を起こしたのち、飼っていた犬を外に放ち、自分も山に身を潜めていたが、数日後に警察に発見され逮捕に至った。保見死刑囚に対しては2019年、最高裁で死刑が確定している。

 あの事件から10年が経ったが、山あいの集落で一夜のうちに起こった大量殺人事件が世間に与えた衝撃は大きかった。〈容疑者が集落で村八分にあっていた〉という一部報道から、この事件は“村八分の男による復讐”であるという情報が一気に広まったのだった。

 しかし、この情報は誤っている。保見死刑囚は妄想性障害を発症しており、事件もその妄想が肥大した結果である旨は、裁判所も認定しているからだ。つまり、村八分という言説は、彼自身の妄想である。しかし“村八分の復讐”説を信じる人は少なくない。たとえば、YouTubeでは、〈平成の八つ墓村〉という文言を添えた事実に反する解説動画が、いまだに複数アップされているのだ。

 その周南市・金峰地区で、故郷を盛り上げるための活動を続ける男性に出会った。金峰地区出身の尾崎行雄さん(68)は、地元の地域づくりグループ『防長の吉野をつくる会』の事務局長。年に一度の会報の執筆、発送もこなす。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン