ヨーグルトでさえ、本当に効くかどうかの確証はない(写真/PIXTA)
専門家たちが特に懸念しているのは、機能性表示食品のジャンルでいま「免疫ケア」がトレンドになっていることだ。サプリはもちろん、飲料やヨーグルト、グミなどでもこの機能性をうたう商品が発売されている。コロナ禍を経験した私たちにとって「免疫」は、病気を防いでくれる魔法の言葉のようにも聞こえる。
「『免疫ケア』というと聞こえはいいですが、これは非常にあいまいなもの。免疫については科学的に解明できていない部分が多く、欧米では『免疫にいい』などという表示は一切許可されていません。にもかかわらず、厚労省はこうした表記を許可してしまったのです」
コロナ禍に乗じて、免疫という未開の分野での消費行動は爆発的に増大した。日本ではこのほかにも「記憶力を上げる」「寝つきをよくする」「ストレスを緩和する」といった、あいまいで主観的な文言の書かれたサプリや健康食品が続々とつくられ、売られている。形成外科医で『医者が家族だけにはすすめないこと』著者の北條元治さんが指摘する。
「これらのサプリはどれも、医学的に効果が立証されているものではありません。そもそも、ただの飴をなめるだけでも、血糖値が上がってストレスは緩和されます」
サプリのパッケージでも頻繁にうたわれ、テレビ番組などでも盛んに取り上げられる「抗酸化」というワードも、実はあいまいなもの。「活性酸素が体をさびつかせ、老化やがんの原因になる」という仮説はいま、大きく揺らいでいる。
「野菜や果物を摂ることで病気の予防につながることはわかっていますが、それが、摂った食べ物に含まれるポリフェノールなどの抗酸化物質による効果かどうかは、わかっていないのです。
そもそも、私たちが酸素を使って呼吸している以上、酸素がもととなってつくられる活性酸素ができるのは自然なこと。抗酸化物質を摂らなくても体内には活性酸素の悪さを消す働きがあるほか、活性酸素を免疫システムの一部として活用しています」(左巻さん・以下同)
活性酸素を片っ端から除去してしまっては、かえって美と健康を害するかもしれないのだ。
それどころか、抗酸化物質のサプリが病気を招くことが明確に示されたケースもある。
「“血液中のβ-カロテンやビタミンEの濃度が高い人はがんになりにくい”という研究結果を受け、アメリカとフィンランドで大規模な臨床試験が行われました。
両国で合計4万8000人の喫煙者(肺がんリスクのある人)をグループ分けし、片方にβ-カロテンのサプリを、もう片方にはプラセボ(偽薬)を投与したところ、なんとβ-カロテンを投与されたグループの方が、肺がんや心臓病による死者が多かった。つまりこの調査は“緑黄色野菜などでβ-カロテンを摂るのは体にいいが、サプリメントでβ-カロテンを摂取すると、むしろがんや死亡のリスクが高まる”という、衝撃的な結果になったのです」