国内

価格高騰の「卵」 追い打ちをかける鳥インフル拡大と背景にある「日本の養鶏の劣悪な環境」

(写真/GettyImages)

卵も高騰(写真/GettyImages)

 庶民の味方だった卵の値上がりが止まらない。鶏卵卸大手「JA全農たまご」の発表によると、2月の卵の卸売価格は、統計を公表している1993年以降で最も高くなり、1kg当たり(東京地区・Mサイズ)の平均卸売価格は327円を記録した。昨年2月と比較して152円も値上がりした計算になる。

 主な要因は、ロシアによるウクライナ侵攻や新型コロナショックで世界的に物流が滞り、輸入飼料などが高騰したことだ。消費者問題研究所代表の垣田達哉さんが解説する。

「トウモロコシなどの飼料や包装用資材、電気・ガスといったエネルギー費ほか、あらゆるものの値上がりが影響しています」

 今後さらに2倍、3倍と値段が上がっていくことは考えにくいというが、ある別の懸念が生まれていると続ける。

「生産現場でコストカットをするために“手抜き”が行われるのではないかということです。『これ以上卵の値段を上げることはできないから』と人件費などを下げた結果、食の安全に影響が出る可能性があります」

 また、価格高騰に伴う品薄に追い打ちをかけるのが、鳥インフルエンザの感染拡大だ。垣田さんが続ける。

「昨年から今年にかけて、過去最悪のペースで高病原性鳥インフルエンザが発生した結果、大量の殺処分が行われています」

 農林水産省は3月2日、福岡市の養鶏場で新たに鳥インフルエンザの発生が確認されたことを発表。約24万3000羽の採卵鶏の殺処分が決まった。今季の鳥インフルエンザの流行に伴い全国で計1385万羽が殺処分対象となっており、その影響で北海道の銘菓『白い恋人』が販売を一部停止したり、崎陽軒が『炒飯弁当』の販売を休止するなど卵を原料とした食品にまで大きな影響が出ている。

 食品ジャーナリストの郡司和夫さんは、鳥インフルエンザの発生が止まらない理由には、養鶏の劣悪な環境があると分析する。

「飼料の管理、糞の処理、死骸の始末。この3つを徹底している養鶏場は実は決して多くありません。

 かつて狂牛病(BSE)が蔓延した際は、BSEにかかった牛の肉骨粉がエサに紛れ込んでいたことで感染拡大したといわれていますが、鳥インフルエンザも同様に、エサから感染している可能性があります。特に日本の養鶏場では、メーカーから一括購入した配合飼料をそのまま与えているケースも多い。すると、BSEの肉骨粉と同じように病原体が飼料に紛れていても、わからないのです」(郡司さん)

 養鶏場から出た糞や死骸の処理にも問題があるという。

「同じ処理業者が複数の養鶏場を回って処理していることも多く、1か所で感染が発生するとほかに広がりやすい。また、日本は狭い場所で何十万、何百万羽と飼育しているため、1羽感染すると糞を媒介して雪だるま式にウイルスが蔓延し、大量に処分することになる。それまでは表に出なかった日本の養鶏の劣悪さが、鳥インフルエンザの流行によって可視化されたとも言えるでしょう」(郡司さん)

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン