「毎日のように250錠もの鎮咳去痰薬を一気に服用するほどの依存に陥った若者の事例が報告されています。メチルエフェドリンとジヒドロコデインの両方が入っている薬を大量に服用するのは、いわばアッパー系の薬物であるコカインとダウナー系のヘロインを混ぜて使用しているような状態。食欲不振や体重減少、倦怠感、無気力、不眠、自殺願望などの副作用が表れる可能性が指摘されています。加えて、多くの風邪薬にはカフェインも含有されているため、カフェイン中毒も懸念されます」
今季、猛威をふるったインフルエンザにおいても、特効薬のタミフルを使っているのは日本だけ。
「世界の使用量の実に約8割が、日本で消費されています。風邪と同様、インフルエンザになっても欧米では病院に行かないのが常識です。タミフルをのんでも、期待できる効果は“平均して17時間早く熱が下がる”だけ。わざわざ病院に行って薬をもらう意味はありません」(岡田さん)
高熱が出たときに、しばしば処方される抗生物質についても、多くの識者は懐疑的だ。
「抗生物質はのみすぎると体内に薬が効かない耐性菌ができてしまう。いざ深刻な感染症に罹患したときに抗生剤が効きにくくなるため、世界では抗生物質の処方に慎重です。米ワシントン大学を中心とする国際研究チームが204の国と地域を対象に分析を行った調査結果でも、抗生物質への耐性を持つ薬剤耐性菌による感染症で、2019年に世界で120万人以上が死亡していたことが明らかになっています」(大西さん)
「どうして日本人は、少し頭が痛いだけで、サプリメントのようにすぐに薬をのむんでしょうか?」
怪訝な顔で話すのは、アメリカから留学し、都内の私立大学に通っているBさん(仮名・24才)だ。
「アメリカに住んでいたとき、鎮痛剤は本当につらいとき、年に数回のむスペシャルな薬でした。だから日本のドラッグストアにあんなにたくさん痛み止めが並んでいることに驚いたし、同級生が『頭が痛い』『生理痛がひどくなる前にのんでおく』と1日に何粒ものんでいる様子を見ると、なんだか心配になります」(Bさん)
室井さんによれば、アメリカの医学では、解熱鎮痛剤はその副作用を理由に「できるだけ使うべきではない」とされているという。