WBC決勝で米国をくだし、優勝を喜ぶため大谷翔平に駆け寄る侍ジャパンの選手たち(AFP=時事)

WBC決勝で米国をくだし、優勝を喜ぶため大谷翔平に駆け寄る侍ジャパンの選手たち(AFP=時事)

「この二人(ロドリゲス氏とオルティズ氏)もそうですし、今日来ていたケン・グリフィーJr.選手もそうですが、小さい頃に見ている選手たちと同じフィールドに立ってインタビューを受けているのも正直信じられないような感覚ではあるので、もっともっと自分がそういう立場になれるように頑張りたいなと思っています」

 ロドリゲス氏の「日本時代にアメリカの野球を見て憧れたり参考にしていた選手は?」という質問に対して。喜びと感動に包まれている状況でも、目の前の相手への気配りを忘れないところが素晴らしい。これを聞いた二人は、大喜びで大谷に抱きつきます。自国が負けた悔しさはあったでしょうが、明るく勝者を称える二人の態度も、また素敵でした。

 試合直後の日本のメディアによるインタビューでは、「世界一になって日本の野球がますます世界で注目されますね」という質問を受けます。大谷はこう答えました。

「日本だけじゃなくて韓国もそうですし、台湾も中国も、またその他の国も、もっともっと野球を大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことがよかったなと思いますし、そうなってくれることを願っています」

 質問した側は「日本のすごさ」を語って欲しかったようですが、大谷の視点ははるかにスケールが大きく、はるかにグローバルでした。東アジア全体、ひいては世界中でもっと野球が盛り上がってほしいという願いには、野球への愛があふれています。

 インタビューに答える大谷は、あくまでも謙虚で穏やかで、どんなときも感謝や気配りやリスペクトを忘れません。しかも、勝った負けたや国単位での対抗意識はさておいて、野球そのものを心から愛し、楽しんでいる様子が伝わってきます。プレーに感動するだけでなく、その高潔にして美しい姿勢にも深く感動せずにはいられません。

 私たちも仕事や人付き合いで、大谷の境地に少しでも近づけるように頑張りたいものです。まずは「たまたま勝ちましたけど、これからもっともっと高いところを目指して頑張っていきたいと思います」というセリフあたりから繰り出してみるのはどうでしょうか。ちゃんとした「勝ち」の機会を待っているといつになるかわからないので、手っ取り早く、隣りの席の同僚とジャンケンを勝つまでしたりして。

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