慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターでセンター長を務める新井康通教授らは、日本人の平均寿命を大きく上回り100歳を超える「百寿者」の研究を行ってきた。百寿者研究は、日常生活やパーソナリティに関わる部分も調査している。
百寿者の食生活は誰もが気になるところだろう。しかし、新井教授は「100歳以上の食事調査は難しい」という。
「100歳以上の人が食べたものを覚えて記録するのは困難です。その上で、栄養士の方と34人の百寿者について調査したところ、エネルギー摂取量は平均で体重1キロあたり30キロカロリー、たんぱく質は1.2gほど摂取していました」(新井教授、以下同)
百寿者の食物の嗜好と摂取状況についての別の調査では、40~60歳の頃は「肉が嫌いで食べなかった」人が多いが、現在は「好きでよく食べる」と答えた人が多かった。
新井教授によると、「100歳になると歯や嚥下の問題から、肉よりも柔らかい魚を好む傾向」が見られた。同様に、野菜は生ではなく煮たり茹でたりして食べる工夫をする人が多いという。
「100歳時点の体を維持するためには、たんぱく質、エネルギーをしっかり摂り、ビタミンを補充する必要があります。百寿者は口腔機能が落ちた分、食べやすい工夫をして栄養をしっかり摂る傾向があるようです」
百寿者の性格はどうか。
「開放性、誠実性、外向性、調和性、神経症傾向の5つからなる性格要素を分析したところ、百寿者は誠実性と開放性、外向性が高いことがわかりました。誠実性は責任感があり、勤勉で真面目なことを意味します。例えばある女性の百寿者は、70歳頃にラジオで『リンゴが健康にいい』と聞いたら、亡くなる100歳まで食べ続けたそうです」
百寿者に多く見られた3つの性格のうち、外向性は「社交的・活動的・ハデ好き」、開放性は「創造的・好奇心旺盛」、誠実性は「意思が強い・几帳面・頑固」といった性格をそれぞれあらわしているという。
そうした性格傾向の影響か、百寿者は「介護で家族に負担をかけていない」との結果も出た。
「百寿者を介護する家族のストレス度を研究したところ、一般の高齢者を介護する家族より負担感が低かった。100歳が元気だからではなく、要介護状態になる前に家族と良好な人間関係があったと想像できます」