ビジネス

マンションの一室から始まり累計販売1億食超え スタートアップ企業の「レタス工場」成功の秘密

SF映画のような光景が広がるレタス工場の亀岡プラント(京都府亀岡市)。播種から出荷まで約40日間かけて育てられる。1日あたり2トンを生産。稼働率97%達成

SF映画のような光景が広がるレタス工場の亀岡プラント(京都府亀岡市)。播種から出荷まで約40日間かけて育てられる。1日あたり2トンを生産。稼働率97%達成(撮影/太田真三)

 今、国内外から熱い視線を集めているのが、植物工場スタートアップ企業のスプレッド(本社・京都市)だ。創業翌年の2007年に稼働した植物工場「亀岡プラント」で前代未聞の大規模なレタス栽培を始め、困難とみられた黒字化を6年で達成した。成功の秘密はどこにあるのか。同プラントを取材した。

 植物工場はシステムのタイプによって、「人工光型」と「太陽光型」に大別される。同社のプラントはLED照明を使う人工光型の水耕栽培。日が射す昼間と暗い夜間を人工的に作り出し、照らす時間も範囲も育成状況を見ながらきめ細かく調整しているのが興味深い。広報部のヴォロンコヴ・ユーリ氏が説明する。

「創業者(稲田信二社長)は青果流通に30年以上携わっており、消費者の方が喜ぶ野菜を作りたい、野菜の品質を極めたい気持ちが原点。最初はマンションの一室で実験を重ねて美味しい野菜をどう作るかを研究し、温度や湿度のバランス、光の当て方や波長、養液の栄養素の配合などを最適化しています」

生産されたレタスは「ベジタス」シリーズとして全国約5000店舗で扱われている。2022年、累計販売数が1億食を突破。生産性の向上などにより、2008年の発売当初258円だった店頭価格(実勢、税別)は2011年に198円、2019年に158円まで下がり、現在に至る。2030年に国内全体で日産100トン、生産量ベースで国内レタス市場シェア7%を目指す

生産されたレタスは「ベジタス」シリーズとして全国約5000店舗で扱われている。2022年、累計販売数が1億食を突破。生産性の向上などにより、2008年の発売当初258円だった店頭価格(実勢、税別)は2011年に198円、2019年に158円まで下がり、現在に至る。2030年に国内全体で日産100トン、生産量ベースで国内レタス市場シェア7%を目指す (撮影/太田真三)

 安定的に低コストで供給するには大規模化と高稼働率が鍵を握る。2018年、亀岡プラントで培った技術とノウハウを活用した世界初の大規模自動化植物工場「テクノファームけいはんな」(京都府木津川市)を始動、稼働率は99%を達成した。

 2021年からは他社との協業による工場も展開し、中部電力などと静岡県袋井市に日産10トンの工場も建設中だ(来年稼働予定)。約100か国から年間約300件の問い合わせも相次ぎ、知名度は海外にも大きく広がっている。

取材・文/上田千春

※週刊ポスト2023年4月21日号

関連記事

トピックス

優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
生きた状態の男性にガソリンをかけて火をつけ殺害したアンソニー・ボイド(写真/支援者提供)
《生きている男性に火をつけ殺害》“人道的な”窒素吸入マスクで死刑執行も「激しく喘ぐような呼吸が15分続き…」、アメリカでは「現代のリンチ」と批判の声【米アラバマ州】
NEWSポストセブン
“アンチ”岩田さんが語る「大谷選手の最大の魅力」とは(Xより)
《“大谷翔平アンチ”が振り返る今シーズン》「日本人投手には贔屓しろよ!と…」“HR数×1kmマラソン”岩田ゆうたさん、合計2113km走覇で決断した「とんでもない新ルール」
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン