大腸がんの3割を見逃す
バリウムには腸などの消化管に穴が開く「穿孔」のリスクもある。一方、2003年から代わりに上部消化管内視鏡(胃カメラ検査)を導入した新潟市では、胃がんの発見率が3倍に上昇したという。
ただ医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は、「ピロリ菌がない人は、胃カメラ検査も毎年のようにやる必要はない」と語る。
「胃がんの原因はピロリ菌だけではないし、内視鏡は食道がんなども見ることができるのは事実。ですが、胃がんの主な原因であるピロリ菌の対策ができていれば、胃がんの可能性は相当程度低いと判断できます」
ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師は、大腸がん検診として広く普及する便潜血検査(検便)の欠点をこう指摘する。
「便を採取してがんなどによる出血の有無を調べる検査で、体への負担もなく安価に繰り返し実施できる有用な検査ですが、発見率に問題があります。小腸に近いところの出血しにくいがんを見落とすケースが多く、便潜血検査では大腸がんの約3割を見逃すとの研究結果もあり、注意が必要です」
男性特有の前立腺がんは、PSA検査という新しい検査方法が確立されて以降、発見数が大きく増えた。しかし岡田医師はそれが逆に新たなリスクを生んでいると言う。
「発見数は増えたのに、前立腺がんの死亡率は変わっていません。これは、放っておいても問題のない症例まで治療をした結果であり、これこそ過剰医療の典型。実は前立腺がんには放っておいても進行しないものがあります。前立腺がん以外で死亡した1000人を解剖したら、60~79歳の男性の7割に前立腺がんが見つかったとの報告もある」
過剰医療で健康を損なうことがないよう気をつけなくてはならない。
※週刊ポスト2023年4月28日号