やや口ごもりながらも、知られざる2人の過去の確執を語ってくれた山野井泰史氏と、平山ユージ氏

やや口ごもりながらも、知られざる2人の過去の確執を語ってくれた山野井泰史氏と、平山ユージ氏

【若き日の冒険を振り返るのはやたらに楽しそうだ。まるで昨日のことのように、岩の感触や夕日の残像に目を細める。ふと山野井が、小さく間を置く。「本当ならこんな話は、平山君と2人のときにしたいのだけど…」とやや口ごもりながら語り始めた。】

山野井:今回、平山君と会うことになってからこのへん(胸に手を置き)がざわざわしてなんかすっきりしない。ヨセミテで、嫌な奴というか冷たい奴になって別れた感覚がずっと残っていて。実は今でも、謝りたいとすごく思っているんだけど。

【ヨセミテでのキャンプ生活は約1か月。山野井は高難易度のコズミック・デブリにトライし続け、4日間に及ぶトライの末ついに成功させる。一方の平山は着いた当初、5.11 (※デジマルグレードによる難易度表示)を中心に40~50本(!)を登る。1本のルートを登るごとにめきめきと力をつけ、山野井が3年がかりで落としたコズミック・デブリ(デジマルグレード5.13a)を、その直後にあっさりと登ってしまう。】

平山:今となっては気にしてほしくないですが… 僕がコズミック・デブリを登ってしまったのがきつかったかと。

山野井:そうだと思う。

平山:トップロープでやったとき、一発で登れるか登れないか? ぐらいの登りをして、翌日に完登。それで2人の間の空気が変わりました。自分もどこか、寂しいな…という思いもあって。

【2人の物言いは驚くほど素朴でまっすぐ。上辺だけの飾った言葉や心にもない言葉はひとつもない。】

(続きはビッグコミック2023年5月25日号にて)

【プロフィール】
山野井泰史(やまのい・やすし)/1965年東京生まれ。単独で、酸素ボンベを使用せずに、未踏ルートで、という極限の条件で世界の高峰に挑み続けるアルパインクライマー。小学生から登山を始め、高校卒業後、数々の登山史に名を刻むクライミングを実践してきた。2021年数々の功績が評価され、登山界の最高栄誉“ピオレドール”、その中でも、歴代受賞者にはエベレスト無酸素初登頂のメスナー氏など、登山界のレジェンドばかりが並ぶ“生涯功労賞”を受賞した。

平山ユージ(ひらやま・ゆーじ)/1969年東京生まれ。プロ・フリークライマー。15歳でクライミングを始め、17歳で渡米、19歳でフリークライミングの本場ヨーロッパに渡る。数々のスポーツクライミングのコンペで好成績を収め、1998年と2000年の二度にわたりリードクライミングのワールドカップで総合優勝をなし遂げる。また初見のルートを1回で完登する「オンサイト」にこだわり、世界最難関の岩壁をいくつも(そのうちのいくつかは世界で初めて)オンサイト達成している。

※ビッグコミック2023年5月25日号

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