そのとき、「それ、本人が高値で売っているよ」と言うべきか一瞬迷ったけど、他人の家に波風を立ててどうすると思い、一瞬ひるんだらもう言えなかった。結局、その娘は高校卒業を待たずに家出をして夜の世界に入ったと風の噂で聞いたけれど、その後どうなったのか。その友達との縁も切れたので知る由もない。

「ね、オバちゃんとご飯食べない?」

 アキバの生足娘の後ろを歩きながら、いま声をかけたらどうなるか。ひとり暮らしだから一晩や二晩なら泊めてあげてもいい。でも、彼女たちは私が想像できないような重荷を背負っているかもしれない。自分の暮らしもおぼつかないのに無責任なことをするなって。

 結局、何もできやしないのに、見かけるたびに気持ちが千々に乱れるんだわ。“偽善者”? わかってるって。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2023年5月25日号

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