JR東日本は2018年度から山手線でATO(自動列車運転装置)の試験を行ってきた。自動運転の走行試験を行った山手線車両(時事通信フォト)

JR東日本は2018年度から山手線でATO(自動列車運転装置)の試験を行ってきた。自動運転の走行試験を行った山手線車両(時事通信フォト)

 東武は、東京都を中心に埼玉県・千葉県・群馬県・栃木県に約463.3キロメートルもの営業路線を有している。これは近畿日本鉄道に次いで私鉄2位だが、広大な路線網ゆえに利用者が少ない区間もある。

 そうした利用者が少ない区間を維持するためには、自動運転を推進して業務の省力化を図らなければならない。そうした思惑から、東武が自動運転の導入に前向きになることは理解できる。

 しかし、なぜ東武は自動運転の技術開発をライバルでもあるJR東日本と一緒に取り組むことにしたのか?

「JR東日本はドライバーレス運転を実現するため、ATACS(アタックス、Advanced Train Administration and Communications System)と呼ばれる無線式列車制御システムの導入や高性能な自動列車運転装置の開発を進めています。JR東日本は、2022年10月頃から約2か月間、山手線で営業列車による自動運転の実証運転を実施しています。これら自動運転の導入に向けた取り組みが共通していることや、共通で技術開発することで開発費を抑制できる点、仕様を共通化することで将来的に装置のスケールメリットによる導入コストの削減効果が期待できることから協力することになりました」(同)

 つまり、東武のみならずJR東日本も運転士不足という事態に危機感を抱き、ライバルだから協力できないなどと言っていられないほど深刻な状況に追い込まれているのだ。

 鉄道業界はコロナ禍を脱しつつあったが、運転士不足という悩ましい問題が新たに浮上し、それは一刻の猶予もないほど切羽詰まっている。

 鉄道業界は一致団結して、この難題に立ち向うことになる。果たして、迫りくる難局を乗り越えることはできるのか?

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