ビジネス

減便迫られるほど深刻な鉄道の運転士不足 各社で自動運転開発もすすむ

長崎電気軌道HPより

長崎電気軌道HPより

 トラックドライバーやバスの運転手不足がよく話題になるが、鉄道でも運転士不足が深刻な問題となっている。運転士不足は危機的な状況にあり、その解消の一助に自動運転の技術開発がすすめられている。ライターの小川裕夫氏が、運転士不足に悩む長崎電気軌道、JR東日本と共同して自動運転を実用技術にしたい東武鉄道の取り組みをレポートする。

 * * *
 長崎県長崎市には、約11.5キロメートルの路線網を有する長崎電気軌道が走っている。長崎電気軌道は市内の主要交通を担い、大正期から市民の足として親しまれている。また、長崎は観光都市でもあり、他県から長崎を訪れる修学旅行の生徒たちをはじめとする観光客の需要も高い。

 そんな長崎電気軌道が、2023年5月15日から3系統を減便するダイヤ改正を実施した。3系統は蛍茶屋から桜町を経由して長崎駅前を通って赤迫へと至る路線。コロナ禍なら減便といった事情も理解できるが、行動制限もなくなった今、なぜ減便したのか?

「長崎電気軌道では運転士不足が常態化しています。常時、運転士の募集をしていますが、なかなか集まりません。これまでは何とかやりくりしてきましたが、運転士が不足していては電車を動かすことはできません。やむを得ず減便という対応を取りました」と話すのは、長崎電気軌道経営企画室の担当者だ。

 長崎電気軌道の3系統は区間の大半が1系統と重複している。そのため、3系統が減便しても大きな影響はないように思えるが……。

「朝のラッシュ時間帯は通勤・通学需要が多く、減便したら大きな混乱を生じることが予想されます。そのため、ラッシュの時間帯は臨時運転という対応を取りました。臨時便の運行により、ラッシュ時間帯の運転本数に変化はありません。これまで通り、ご利用いただけます」(同)

想定を上回るスピードですすんだ運転士不足

 昨今、地方都市は人口減少が著しいが、人口が維持できていても高齢化率は軒並み上昇している。そうした事情は、県庁所在地の長崎市でも変わらない。2015年に約42万9000人だった人口は、2023年4月末時点で約39万5000人まで減少。高齢化率も2015年は29.1パーセントだったが、2022年3月末には33.5パーセントまで上昇している。

 こうした数字からも生産年齢人口が急減し、それが運転士不足を招き、公共交通が維持できないという負のスパイラルに陥っていることが窺える。

 運転士不足は地方の鉄道事業者だけの話ではない。都市圏の鉄道事業者でも同じ悩みを抱えている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン