全国各地の米作りの現場を300か所以上回り、お米に関するイベントなどで積極的に情報発信。

澁谷さんは、お米に関するイベントなどで積極的に情報発信。「米処 結米屋」での米の販売や、著書『炊飯器で一発定食』(Gakken)も刊行し、米食の魅力を伝えている

 近年は糖質制限ダイエットの広まりで米の敬遠に加速がかかり、長寿のために肉を食べることが推奨されたりもしているが、日本人の胃腸は脂肪を消化するのが苦手なため、肉食は胃腸に負担がかかり内臓脂肪をためやすくなるというデータもある。5ツ星お米マイスターの澁谷梨絵さんは、米の糖質とお菓子の糖質はまったく異なると説明する。

「米の糖分であるでんぷん(多糖類)は脳が働くためのエネルギー源で、米を食べると脳に糖分がいきわたって集中力が高まります。そして余ったエネルギーは脂肪ではなく、筋肉として体内に蓄えられます。米が増えるとおかずも増えやすいので太りやすくなると勘違いされますが、米を食べるだけでは太らないという学術論文があります」

 そもそも糖質制限によるダイエット効果は一時的かつ限定的だ。澁谷さんが続ける。

「米の糖分が入ってこないと、体は大切なエネルギー源となる糖分を守るために水分を放出します。そのため一時的に1〜2kgほどはやせるものの後が続かず、肌はカサカサになる。健康的にやせたいなら少量でも米を食べ、ほかのカロリーを減らすべきです」

 パンの安全性に疑問を投げかけるのは、日本の稲作を守る会の代表で、自身も有機栽培米作りにたずさわる稲葉勇美子さんだ。

「ご飯を炊くのに必要なのは水だけですが、パンは食品添加物や油などが多く含まれた『超加工食品』なので体への影響が心配です。また、ご飯一膳の値段は約30円とリーズナブル。しっかり咀嚼するので脳に刺激を与え認知症予防にもなるといわれます。腹持ちがよいため、ほかの食品をあまり摂らずにすむメリットもあります」

 栄養面でのメリットにとどまらず、味の面でも米は進化を続けている。澁谷さんは、いまはまさに「お米戦国時代」だと言う。

「各都道府県がオリジナル米の開発、生産に力を入れ、お米のブランド化が進みました。この10年ほどは毎年のように新たな品種が登場して、現在、国に登録される主食用品種は500ほどあります。そうした競争のおかげで、収穫される米のレベルが年々上がり、多種多様な味を追求しています」(澁谷さん・以下同)

 新米の時期は1日4合食べ、これまで300種以上の米を食べ比べたという澁谷さんは、近年開発された米から作り手の個性を感じている。

「パンや麺など主食の選択肢が増えるなか、米はたしかに映えません(苦笑)。しかし、米は同じ水加減で同じように炊くと、作り手によって味わいがまったく異なります。なぜなら、どの農家さんもすごく手をかけて米を作っているからです。例えば、田んぼにかつおだしや昆布だしなどをまいて稲に旨みを吸収させたり、無農薬・無肥料で時間をかけて稲を育てたりしている。どの農家さんも『うちのお米がいちばんおいしい』と口にします」

※女性セブン2023年6月15日号

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