それぞれがんの生存率
当初は、皮膚がんなど限定的に保険適用が認められていたが段階的に拡大し、現在は肺がんや頭頸部がんなども適用となっている。内科医の名取宏さんが言う。
「昔は『免疫療法』というと怪しいイメージがありましたが、オプジーボが保険適用になって以来、免疫療法についての見方は大きく変化しています。残念ながら合わない患者さんもいますし副作用の大きさも懸念されてはいますが、どのがんにはどの免疫療法が効くのかを考える時代になってきており、薬だけでがんを治せるようになるのではないかと期待されています」
血液系のがんに対する最新治療法は、2019年に承認された「CAR-T細胞療法」(キメラ抗原受容体T細胞療法)だ。名取さんが続ける。
「患者さんの血液を採取してT細胞(リンパ球の一種)を取り出し、遺伝子操作によってがんと闘う力をより強化したものに改造。それを培養して数を増やしてから、再び患者さんの体内に戻す治療法です。費用は高く数千万円かかりますが、ほかに方法がない場合に限って保険適用が認められています」
あらゆる薬が開発、刷新されていく中で、「どの薬が効果的かわかる」ようになりつつあるというのは室井さんだ。
「プレシジョンメディシンという、遺伝子検査を組み合わせた治療(がんゲノム医療)が広がっています。遺伝子の変化や違いによって、効く薬と効かない薬は分かれており、遺伝子を調べることでがんの弱点を知ることができる。この10年でがんの遺伝子検査の価格が低下したことで、サービスが急拡大し、効く薬をあらかじめ知ることができるようになってきました。
これまではどの抗がん剤が効果的か明確な根拠がないままに投薬されるケースも多かったのですが、現在は遺伝子に対応した薬が使用できるようになってきた。例えば白血病なども、遺伝子異常に合わせた薬を使えるようになって、生存率が上がったと考えられます」
薬や治療法は進化の一途だが、一方で必ずしも新しいものが信頼できるとは言い切れない。現在行われている主ながん治療は、(1)手術療法、(2)放射線療法、(3)化学療法(抗がん剤)、(4)免疫療法の4つ。これに加えて「第5の治療法」として注目されているのが「がん光免疫療法」だ。体に害のない近赤外線や低反応レーザーを照射して、がん細胞を消滅させるという、一見、画期的な治療法に思える。だが、勝俣さんはこう注意を促す。
「光免疫療法はまだ治験段階にあり、すぐに飛びつくのは早計です。また、免疫細胞療法をネットで検索すると、自由診療でやるような怪しげな情報が、あたかも“最先端医療”であるかのように書かれているケースも多い」
※女性セブン2023年6月22日号
罹患者数に比べると死亡者数の増加は横ばいに
がん罹患数・死亡数の順位(女性)